『月刊エルダリープレス シニアライフ版』2017年3月号に
「‘ヘルプ信号‘早急に 周囲の支援受け生活継続」という記事が掲載された。
この原稿は「終活」といっても実際に準備しているのはわずか、という状況を踏まえてのものである。
以下、元原稿
困ったら早くヘルプ信号を出す。子や行政に甘えていい
――「終活」がブームになったのはいつからですか?
「終活」という言葉は、2009年「週刊朝日」による造語です。2012年にユーキャン新語・流行語のトップテンに選ばれ、あっという間に市民権を得ました。
――どうして火がついたのでしょうか?
かつては「人生60年」と言われて生活設計もそれが前提になっていた。ところが今は男性が80年、女性が90年と超高齢社会になり、社会にひずみが出てきました。「長寿」そのものはいいことです。しかし、それを支える基盤が社会にも家族にもなくなりました。長くなった20~30年の生活設計ができない、という問題に直面することになりました。
――その一つは経済不安?
今の高齢者で最も多いのは夫婦2人世帯。戦後は核家族ですから子どもが育って独立していくと夫婦だけの世帯になる。今の高齢者は優しいですから、できるだけ子どもに迷惑をかけないで、夫婦だけでやっていこうとする。例えば夫が70歳で死亡する。残された妻は自分が残りどれだけ生きるかわからない。10年なのか、20年なのか、30年なのかわからない。どれだけのお金があったら充分かめどが立たない。かつては高齢者ほど資産があって裕福でしたが、格差が広がり、今の80代より下はむしろ資産をもたない貧しい高齢者が多くなっています。「長寿」といっても80代以降は急激に認知症が増えるし、大病して身体の自由が失われる危険は高まる。「要介護」になるリスクが高まります。「高齢者の単独世帯も約25%。「おひとりさまの死」も他人事ではない。
――「老老介護」も増えていますね。
夫婦ともに75歳を超えて、配偶者が要介護になると、残った者も高齢ですから体力的に大変です。共倒れの危険もある。今は「認認介護」という言葉も出てきました。夫婦共に認知症。こうなると生活が成り立たなくなります。
――死後の不安もあります。
配偶者の死ということは精神的にも大きな問題ですから、残った人が葬式の手配やら、死後のさまざまな事務処理など自分だけでは充分にやれるわけがありません。
私は、自力での生活が困難になったら、周囲に「ヘルプ信号」をできるだけ早く出すように、と言っています。子どもや行政に遠慮せず出す。自分たちだけでやろうとするな、と言っています。周囲も、より注意深く配慮する必要があります。