葬儀業の市場規模を予測してみた。
葬儀業の市場規模については「2兆円」という数字が躍るがほんとうか?
そこで私なりにデータを使ってやってみたのが
本日(2019年5月15日)公開した
葬研.com碑文谷創の葬送基礎講座④葬儀市場の規模は?
https://葬研.com/himonya4
である。
世の中には大きく2つの葬儀市場予測数字がある。
①日本消費者協会「葬儀についてのアンケート調査」を基にした予測
最新の2017年1月発表の「葬儀一式費用」の平均額が1,214,000円に全国の死亡数を乗じて算出する方法
1,214千円×1,319千人(2018《平成30》年人口動態年間推計)=約1兆6千億円
※人口動態の確定数は本年9月上旬に発表予定
②経産省「特定サービス産業動態統計調査」を基にした予測
最新の葬儀業の2018年の1件当たり売上が1,374,055円となることから、これに人口動態2018年の年間推計1,319千人を乗じて算出する方法
約1兆8811億円という数字になる。
日本消費者協会データのもつ問題については前回触れている。
格差社会の葬送
https://葬研.com/himonya3
今回は経産省「特定サービス産業動態統計調査」のデータの使い方についても言及した。
そして私が提案しているのは「経済センサス」を中心にした利用(しかし、そのままは使えない)。
もとより私の今回の推計
https://葬研.com/himonya4
も「一つの」ものでしかない。
統計データにはそれぞれ特徴があり、それを理解して使う必要がある、ということだ。
いま葬儀業界では、早くも将来を危惧する声が多い。
社会保障・人口問題研究所「将来推計人口」(平成29)によれば2030年には死亡数が160万人を超えると推計されている。
しかし、2050年以降は減少に転ずると推計されているからだ。
約30年後の話であるが、いま30代の業界人にとっては60代になる頃の話であり、そう遠い未来の話ではない。
約30年後には、生産人口は今より縮小しているだろうし、単独世帯もさらに増え、結婚はあたりまえではなく「選択」の時代になっているだろう。
「おひとりさま」は今よりももっとあたりまえになっているだろう。
格差も拡大しているだろうし、個人化の流れはいっそう進んでいるだろう。
「ひとり死」の問題は、今とは質を変えて社会的に大きな問題となるであろう。
業態の改革ということは、すぐできることではない。
1995(平成7)年から生じた「葬儀の個人化」は、葬儀業界ではほとんど予測されていなかったことであり、その認識が共有されたのは2008(平成20)年のリーマン・ショック以降のことであった。
「家族葬」をうとましく見ていた事業者も自らのカタログに大きく「家族葬」を謳わざるを得なくなった。
経済が変わり、社会意識が変わり、消費者意識が変わっていたのに、業界は後追いするしかなかった。
これへの痛切な悔悟があるのだろう。
問題は「企業の合理性」の観点からだけから見るのではなく、「人間の営み」という観点からの深掘りも求められる。
戦後の高度経済成長で葬儀市場は大きく拡大したが、「人間の営み」という観点ではかなり滅茶苦茶にした。
これを繰り返してはならない、と私は思う。