寺との付き合い方

まさにお盆だからの季節記事なのだが、週刊東洋経済2019 8/10-17(合併号)の特集が「親と子で考える 相続の最新ルール、すぐに始める終活、お墓とお寺の現実」、最新保存版―親と子の3大問題 完全マニュアル」とうたっている。

EPSON MFP image

私が書いたのはpart3「親と子で考えるお墓」の一部。
書いたことを黙っていようかと思ったが、ここに一緒に書いた星野哲さん(元朝日新聞記者、立教大学社会デザイン研究所研究員)、塚本優さん(終活・葬送ジャーナリスト)がFacebookで報告していたので、できは悪いが知らんぷりはできなくなったので報告しておく。最近一段と冴えている吉川美津子さんも書かれている。

part3「親と子で考えるお墓」のみの構成と執筆者は下記の通り。※リンク先は「週刊東洋経済PLUS」https://premium.toyokeizai.net/

・葬儀、戒名、法事、お墓 知っておきたいお寺のリアル
(リアル住職 蝉丸P)https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21200

・身内の不幸にも対応できる 寺との正しい付き合い方
(碑文谷 創)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21201

・僧侶は会社員と兼業も 寺は儲からない
(碑文谷 創)https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21202

・ランチや昼寝ができる 人の居場所をつくり出す寺
(星野 哲)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21203

・「よいお墓」を建てるために押さえておきたい基本のキ
(吉川美津子)https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21204

・自分らしい葬儀にはどれくらいお金が必要か
(塚本 優)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21167

・家族や親戚間でトラブルも 「墓じまい」の傾向と対策
(吉川美津子)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21168

・お墓をめぐる疑問・難問Q&A 義母と同じお墓は嫌だ!
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21169

・海洋散骨には厳しい規制も 増える手元供養のニーズ
(塚本 優)
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/21170

私の最初の部分の原題は「こんなときどうする? お寺とのかしこいつきあい方Q&A」

詳しくは本誌を参照いただきたいが、言いたいことの要点部分のみを抽出しておく。抽出なので話が繋がらない点があることは勘弁。。

Q1
母が死亡したとき、知人も親戚も少ないので入所している特養で葬式を考えている。東京で適当な僧侶を依頼して葬式してもらうことはできますか?
A
菩提寺があり、菩提寺に納骨することを希望する場合には、死亡してからではなく、終末期から菩提寺の住職に相談しておくといいでしょう。死亡したら通夜・葬式に菩提寺住職が来てくれるケースのほうが多いです。交通費、宿泊費の実費は必要ですが、特に高額ということはなく、その後の処理がスムースに進むためにはむしろ安いともいえます。

Q2
檀家となっている寺が葬式のお布施を基準30万円→一律60万円にするそうです。父85歳、母80歳で私も65歳。お金に余裕がなく応じかねます。
A
お寺というのは、布施する金額が生活程度により200万円する人も50万円する人も10万円する人も、あるいは現金がなくお寺の清掃とか労働奉仕する人も、「お寺を支えようとする熱意が一緒であれば」平等に扱う集団なはず。それが「寺である条件」です。

近年、檀信徒の減少、高額所得者の負担が減額、葬式や法事の布施も減額傾向にあり、経営維持に危機感を抱くお寺が増加しています。でも、布施の定額化、高額指定は寺の勘違い。これに従う義務はありません。

ただ、最近は通夜、葬式と奉仕してもらったのに、5000円~1万円を包む、感謝の気持ちもなく、寺を維持する責任も感じない檀信徒がいます。こうした無責任檀信徒の増加も問題の一つです。

Q3
菩提寺の住職に葬式・法事のお布施の目安を訊ねると、「お気持ちで」と。知人は30万円包んだら住職に突き返されたと言います。適切な相場は?
A
「仏教で葬式をする」とは、僧侶としては「仏弟子として送る」ことなので、仏弟子の徴としての戒名(法名)を授けます。

戒名・法名が不要ならば仏教で葬式をしなければいい。

仏弟子にするのに料金がかかるわけではありません。
しかし、「金を払っても立派な名を手に入れたい」とする人がいて、それにつけこむ僧侶がいることも確かです。

Q4
数年前、父が死亡。50歳にして檀家の一員になったが、お寺との付き合いはすべて父がしていたので、困らない程度の基本情報を教えてください。
A
檀家になった場合、権利やメリットもあります。

第1は家族の弔いをしてもらう権利。「檀信徒である」とは、たとえ単身でもお寺が弔う責任をもっている人、という意味です。

第2は、相談できる権利です。私たちは死後だけではなく、生活をしていくうえでさまざまな困難を抱えている。プライバシーを考慮し何でも相談できるのが寺です。

第3は地域に生きていく核として寺を利用する権利です。災害や自死などさまざまな場面で寺の活動が注目されています。

Q5
祖父母の代から檀家。その墓地に祖父母、両親、叔父叔母が入っているが、住職の金銭感覚に問題がある。別の宗派にも親しんでいる。お寺を替えたい。
A
お寺を替わることは可能です。憲法で信教の自由は保障されているからです。
しかし実際には面倒なことが多くあります。
選択肢は一つだけではありません。周囲とよく相談のうえ決められるといいでしょう。

Q6
定年まで5年、再雇用で1年更新の契約社員。自分の入るお墓がなく、準備をしたい。選ぶにあたって注意すべき点はどういうところですか。
A
しかし「自分の死後を託す」ということでいえば「信頼できる寺」を選ぶということが大切になります。

信頼できる寺であるならば、老後や終末期の相談にものってくれますし、葬儀やその後の供養も委託できます。お子さんの相談相手にもなってくれるでしょう。

実際に現地に足を運び、住職に会って、その人となり、考え方、不安と思うことを確かめることが必要です。広告、パンフレットでわかることは限られているし、それで実態はわかりません。

もう一つは「お寺はどう経営されているか?―自立している寺、自立していない寺」が原題。

要点のみ以下抽出する。
・経営的に自立しているのは半分以下の3万程度だろう。「坊主は儲かる」「寺は檀家の寄進でぼろ儲け」という世評は一部の大規模寺院にのみ該当する話で、経営困難にある寺、貧困をよぎなくされている僧侶は少なくない。

・寺の経営悪化の一因は情報公開が進んでいないことである。会計を公開することで、寺は儲かっているのではないという経営実態を檀信徒に理解してもらえるだろう。

また何より大切なのは、寺は檀信徒のために、地域のために何をしようとしているかを明示し、その活動への協賛者を増やすことである。

寺は僧侶個人のものではない。檀信徒、地域の人を巻き込んで運営する必要がある。僧侶個人の発想もやれることも限られる。寺の再生には情報公開と協働化が欠かせない。

・寺は民衆の生死に真向かう精神を呼び起こす必要がある。
葬送、法事の儀礼を営むことが重要なのではなく、そこに生きて死んだ人、遺された関係者の傷みを感じて営むことが重要なのだ。
いのちが粗末される時代、寺にはたくさんの課題がある。

■再三の個人的報告

喘息と腰痛が一段落したと思ったら、今度は頸の動きが不自由になった。
どうしようもないので、これから接骨院に行ってくる。
ガタがくる、というのはこういうことなのだろう。

広告

投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/