死者・遺族を知らずに葬式は可能か?

本日、葬研の「碑文谷創の葬送基礎講座」を更新。13回目になる。https://souken.info/himonya13

ネット系葬儀斡旋事業者の問題を取り上げ、それがサービスを提供している「僧侶派遣」「派遣僧侶」の問題を取り上げてきたが、その最終回になる。

■高橋卓志さん、小川英爾さんとの出会い

高橋卓志さん(臨済宗僧侶。長野県神宮寺住職、但し今は42年勤めた寺を離れ京都在住、タイのチェンマイ留学中。龍谷大学文学部大学院・客員教授)がlineや「高橋卓志オフィシャルサイト」で盛んに発信している。
https://takahashi-takushi.jp/index.html

彼が僧侶として取り組むのは「生老病死」。
けっして葬式だけではないが、その人のための唯一つの葬式のために半端なく尽くす人だ。

神宮寺では「浅間尋常学校」を10年100回1997~2007まで行った。
私はちょうど半分の50回目の「お坊さんサミット」に「外野」の立場で論ずる場にコーディネーターとして参加したのが高橋さんとの最初期の思い出である。
その後、角田山妙光寺(新潟)でのフェスティバル等でご一緒し、高橋さんに取材し、雑誌に寄稿してもらった。
雑誌に穴が空きそうになると、よく高橋さんに頼み込んだものである。

小川英爾さん(日蓮宗僧侶。角田山妙光寺院首《前住職》。1989年に事実上永代供養墓の先駆となる「安穏廟」を開設)は、もう長く葬儀の度に一人ひとり引導文を作成している。

角田山妙光寺のホームページの「葬儀」の項では次のように葬儀に臨む姿勢が表明されている。

「妙光寺では原則として檀徒の方しか葬儀をお受けしません。丁重にお勤めしたいため、お会いしたことのない方では難しいからです。葬儀依頼の電話連絡は24時間受付し、できる限り早めに枕経に伺い、葬儀の進行打ち合わせと故人の人生歴を伺わせていただきます。
 安価で且つ心のこもった葬儀のために、規模の大小を問わず妙光寺での葬儀をお勧めしています。妙光寺が手配して業者によるご遺体搬送と妙光寺での安置、親族の宿泊も可能です。祭壇や備品はすべて備え付け、会場使用も実費ですから安価になります。」

小川さんとは高橋さんよりも古く約30年の付き合いになる。
https://myoukouji.or.jp/

高橋さん、小川さんに共通していることは寺の「情報公開」に熱心である点だ。
「大きな寺だからできること」と評する僧侶が多いが、両寺ともに親の寺を継承したが、継承時にはさほど大きな寺ではなかったことを思い起こす必要がある。

■寺は葬祭を原点に、葬祭に限らず生死全体に取り組むべき

高橋さん、小川さんという僧侶が身近にいたこともあるが、葬式を流れ作業でやる僧侶に対して疑問を感じてきた。
「一人ひとりに向き合わない葬式は葬式として成り立っていないのでは?」

一つひとつの葬式に取り組むということは、葬式の式次第だけではなく、亡くなった人の生死全体に向き合わないとそもそも不可能である。
そのためには寺が普段から人々の生死に対して感性豊かでないとできない。

それを葬式だけを見てしまうと誤る。

■あるエピソード

僧侶対象の講演会に出向いた時のことだ(この話は何度も書いたり話したりしている)。

講演後の意見交換である僧侶が言った。
「最近の遺族、葬儀社はけしからん。葬儀会館に行くと控室に通され、挨拶、お茶出しは葬儀社の社員。遺族は顔を出さない。ひどい時には葬儀を終わった後でお布施を出すのも葬儀社の社員ということもある。葬儀社はそこまでやるのは生意気だし、導師に挨拶もしない遺族はけしからん」

私はその発言に対して激高した。
「おかしい、けしからんのはあなた(僧侶)ではないですか。なぜ遺族の控室に出向かなかったのですか?なぜ遺族の話を聴こうとしなかったのですか?亡くなった方のこと、遺族の想いも知らず葬式を挙げることが可能と思っているなら、それは大きな思い間違いです。そんなの葬式ではないでしょう。」

座は一瞬白け切ったが、幸いなことはその場の半分以上(私感触では7割以上)の僧侶たちが私の意見を支持してくれたことだった。
全部の僧侶がその僧侶に同意していたら、私は絶望していただろう。
そうした死者、遺族のことを知らず葬式をする僧侶がいることも驚きだが、それではいけないと思う僧侶もいるという事実に少し安心した。

私が寺に絶望するのではなく期待するのは、固有の人の生死の問題として葬式に真剣に取り組もうとする僧侶が少なからずいる、ということからである。

※私的な報告
7月末以降、激しい喘息、急な腰痛、続いて頸痛、少し回復して再びの腰痛、続いて右耳の難聴…と2カ月間苦しめられてきたがようやく日常生活に支障がない程度に回復してきている。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

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