■体調を崩した
先週初めより体調を崩した。
昨年夏より、大したことではないのだが、何かと調子がよくない。
身体の不調は、それにとどまらず精神的にも影響し、仕事の進み方が格段に遅くなる。
仕事というのは私の場合には「書く」という作業なので、意欲の減退、アイディアが出てこない、というのが大きな障害になる。
うまくいかないとストレスになり、進めようとしてもうまくいかず、また離れて放っておいても罪悪感で胸が締め付けられるようになる。
どうにもうまくいかない。
恐らくは加齢により酷さが増しているのだろう。
もともと仕事をコツコツと進めるタイプではない。
だいたいが集中して仕上げるタイプである。
60代までは集中すると徹夜も厭わなかったのだが、さすが70代ではそうはいかない。
精神的には、「仕事をしている時間」のほうが「仕事が手につかないで放っている時間」よりもはるかに楽である。
「書ける」という意欲をつかまえられないと、スランプになってしまう。
今は仕事量もかつての6分の1程度なので「楽」なはずであるが、手が動かない、スランプの時間が長くなり、ストレスはむしろ大きくなる傾向にある。
原稿というのは書くことも大変なのだが、書けないという、おおよそ無為な時間が最も大変である。
■火葬の歴史
こちらも迷惑をかけたが、本日(2月2日)葬研「碑文谷創の葬送基礎講座」を更新した。
今回のテーマは「火葬の歴史」
https://souken.info/himonya21
2013(平成25)年に現在の上皇、上皇后が天皇、皇后時代に自分たちの死後の葬りについて簡素化を希望してニュースとなった。
一般の国民同様に「火葬」を希望した。
皇室は明治、大正、昭和の3代の天皇は土葬であった。
詳しくは知らないが昭和天皇の兄弟やその配偶者等の皇族は火葬だったように思う。
天皇の火葬の最初は703年、飛鳥時代の後期、天智天皇(中大兄皇子)の娘にして天武天皇の皇后、女性としては3人目の天皇となった持統天皇(死亡時は上皇)が最初。
記録による最初の火葬(考古学的には6世紀より先)は700年の僧道昭の葬儀であるから、当時最先端の葬法が早くも皇室に採用になったことになる。
もとより天皇の葬儀では火葬も多かったが土葬もあった。
明治維新は「仏教を排して神道」、という流れであったので、「火葬は仏教の葬法」という当時の理解があったために明治天皇以降は大正、昭和と三代の天皇は土葬された。
「日本は火葬の国」といわれるが、火葬が6世紀以降行われてはきたものの、一般に普及するのは明治末期以降、圧倒的になるのは戦後のことである。
江戸期には大坂、江戸という大都市では火葬が一般化していたが、地方では北陸や広島といった浄土真宗が強い地域では火葬が多かった。
しかし、明治中期の最初の統計(1896=明治29年)では全体の約4分の1である26.8%にすぎなかった。
■火葬促進と感染症
最初は否定的であった明治政府が火葬促進に転換するのはコレラ大流行により大量の死亡者発生による公衆衛生問題からである。
現在、新型コロナウイルスによる肺炎が報道を独占し、大きな問題となっている。2月2日段階で死亡者は350人と報じられている。
感染症は古代から人間にとって大きな脅威であった。
近代最も大きな災害となったのはコレラである。
19世紀のコレラは世界的に流行し、パンデミックとなり各地で数万、数十万単位の死亡者を発生させた。
日本においても江戸末期以降数次にわたり万単位の死亡者が発生するほど猛威を振るった。
今、新型コロナウイルスの発生源とされる中国の武漢を封鎖する動きが中国国内にとどまらず世界的に行われている。
江戸時代の日本において流行を阻止することに力があったのは箱根をはじめとする関所で人の行き来を制限することだったとされる。
明治維新以降、この関所が廃されることで、感染症は全国化された。
コレラの大流行を受け、これを阻止する政策の一つとしてとられたのが火葬の推進であった。
1897(明治30)年、伝染病予防法が施行され、死体からの感染を防ぐことを目的に火葬が促進された。
戦前、火葬率は50%まで高まった(1940=昭和15年、55.7%)が、本格的に促進されたのは戦後のことである。
■戦後日本の火葬率の急伸
全国の自治体が火葬場を建設、1960(昭和35)年には63.1%、1970(昭和45)年には79.2%、1980(昭和55)年には91.1%となり、ここで「日本は火葬の国」という一般常識が定着するまでになった。
1990(平成2)年には97.1%、2000(平成12)年には99.1%となっている。
最新の2018(平成30)年の衛生行政報告例では胎児を除くと、死体総数1,384,990、埋葬(=土葬)117、火葬1,384,873となっている。
火葬率は99.99155%となり統計的には100%。土葬は117件にすぎず2桁となっているのは北海道14件、山形県15件、東京都12件の3都道府県にすぎない。
■ムスリム用の土葬墓地
日本では、火葬が原則禁止されているムスリム(イスラム教信者)の場合、死亡後の墓が大きな問題となっている。
ムスリム用の墓地は数カ所で、宗教法人日本ムスリム協会が管理・運営するイスラーム霊園(山梨県甲州市塩山牛奥5032)は曹洞宗文殊院の墓地の一角に別に設けられている。
ムスリムの土葬用墓地として造成されたもので、ここの敷地も満杯状態で新規開発が希望されているが、各地で「土葬反対」の声が強く見通しは暗い。
「近代化」はいいが、宗教宗旨の自由は個人的権利の最大のもの一つ、ムスリムの死者の尊厳を守るためにもムスリム用墓地の開発が期待される。
出身国に遺体を送る場合にはエンバーミング処置して送られる。
■火葬率は国際的に高まる傾向に
CANA(Cremation Association of North America 北米火葬協会)によると、かねて「土葬主流」といわれた米国で近年火葬率が急伸中である。
2003年 29.6%
2008年 35.9%
2013年 45.2%
2018年 53.1%
火葬率が高い上位3州は、①ネバダ州80.1%、②ワシントン州78.3%、③オレゴン州76.6%
火葬率が低い下位3州は、①ミシシッピー州23.7%、②アラバマ州29.5%、③ケンタッキー州31.5%
ちなみにハワイ州は72.9%である。
https://www.cremationassociation.org/page/IndustryStatistics
北米に限らずイスラーム圏を除き火葬率は上昇している。
中国、韓国では国策として火葬を推進している。
キリスト教ではプロテスタントは比較的に火葬に対しては自由な立場をとっており、英国、北欧、ドイツでは火葬率が高い。
長く火葬を禁止していたカトリック(日本については例外として明治期に公認)も1960年代のバチカン公会議でローマ時代から続いた火葬禁止を撤回したため、欧米で火葬が飛躍的に進んでいる。
諸外国の火葬率は詳しくは日本環境斎苑協会斎場情報室
http://j-sec.jp/jyoho.html
「諸外国の火葬率」(2016・17イギリス火葬協会)に詳しい。
一部を紹介すると、
ニュージーランド75.00%、韓国84.19%、台湾96.76%、タイ80.00%、カナダ70.50%、キューバ9.26%、コロンビア2.16%、ロシア9.87%、フィンランド53.25%、オランダ64.45%、スウェーデン81.27%、ポーランド24.00%、ハンガリー64.20%、イギリス77.05%、ドイツ62.00%、スイス86.69%、フランス39.51%、イタリア23.90、ガーナ7.16%