3月16日(月)に葬研に連載している碑文谷創の葬送基礎講座を更新した。
第24回は葬祭ディレクター技能審査について扱った。
https://souken.info/himonya24/
これは1年間、月に2回(おおよそ1日と15日)掲載した最終回にあたる。
葬祭ディレクター技能審査は、第1回が1996(平成8)年である。
現在は1級、2級を同日に行っているが、第1~3回までは2日間にわたって開催されていた。
第1回は、1級が8月26日、2級が8月27日に行われた。
1日にまとめられたのは、現場を抱えた審査官にあたる人たちの負担を軽減するためであった。
審査官は全国で500人以上となる。
多くは現場を抱えており、2日間となると、前日入りで2泊3日となっていた。
また、第3回から9月開催となったが、その理由は8月であると盆飾りの撤収等で忙しく、最終準備ができないという受験者の声を反映したことによる。
また、11~3月の開催を避けるのは、冬季は死亡者が多く、葬祭従事者にとっては繁忙期にあたるためである。
「技能審査」とは厚労省、当時は労働省の資格制度の一つで、これについては本文で詳しく述べている。
■葬祭ディレクター技能審査とは何か?
葬祭ディレクター技能審査協会『葬祭ディレクター技能審査 20年史』(2017(平成29)年1月刊)にその概要を書いたので、それを再掲する。
■葬祭ディレクター技能審査の概要と課題
葬祭ディレクター技能審査の概要と今置かれた状況・課題について、以下、2016(平成28)年の記者発表資料を基に、一部追加・修正のうえ示す。
(発足と実施機関)
1996(平成8)年3月に厚生労働省(当時、労働省)の認定を受け、葬祭ディレクター技能審査協会(1995(平成7)年設立、以下、本協会)が実施しており、葬祭ディレクター(1級・2級)の認定を行っております。
(制度の目的)
葬祭業界に働く人にとって必要な知識のレベルを審査し認定を行い、また、葬祭業界に携わる人々のより一層の知識・技能習得及び社会的地位の向上を目的として実施しております。
葬祭ディレクター技能審査は、葬祭業界全体に等しく開かれた唯一の資格認定制度です。
(葬祭ディレクターの資格取得者数)
葬祭業界で働く従事者約83,000人(最新の『経済センサス』等を基に推計)の3割強にあたる30,702人(平成27年までの1級・2級合格者の合計)が葬祭ディレクターの有資格者となっております。
(合格率と合格基準の考え方)
本試験の合格率実績は、実務経験5年以上を対象とする1級が60%前後、実務経験2年以上を対象とする2級が70%前後と狭き門となっております。これは試験が厳格に実施され、資格にふさわしい技能基準に達した者だけを合格させるという当協会の姿勢の表れです。
もとより本制度は不合格を目的としたものではありません。審査基準と範囲・課題を学科試験・実技試験及び合格基準を広く公開し、その課題に向かって努力したことが合格基準に達しているかを判定するものとなっています。試験という機会を葬祭従事者の資質向上の教育機会として位置づけております。
(社会的監視の強化とコンプライアンス)
2001(平成13)年に消費者契約法、2005(平成17)年に個人情報保護法が施行されました。同年には公正取引委員会による葬儀サービスの取引実態に関する調査が、2007(平成19)年には総務省による葬祭業の取引の適正化に関する調査が実施され、2014(平成26)年には景品表示法の一部改正が行われ、2015(平成27)年には国民生活センターが葬儀料金トラブル相談について報道発表を行いました。
また、葬祭業の位置づけに関しても、2011(平成23)年、2012(平成24)年に経済産業省よりライフエンディング・ステージに関する報告書が発表され、葬祭業に対する社会的監視の強化とともに、社会的位置づけについて広く議論が行われています。
葬祭ディレクター養成の大きな課題の一つがコンプライアンス(法令遵守)にあることは明白です。
(葬祭ディレクターに求められること)
葬祭従事者に求められることも、年々より深く、広くなっています。消費者保護はもとより、亡くなった方の尊厳を確保すること、個々のご遺族の亡き人を弔う気持ち、意向を大切にし、深い悲嘆にあることを理解すること、かつ文化・宗教への適切な理解をもって、弔いができるよう専門家として支援することです。
発足当初に比べ、よりいっそうホスピタリティに富んだ、質の高いサービスを提供できる人材育成が求められるようになっております。
(課題への対応)
本協会では、あるべき葬祭ディレクター像を常に吟味・検討しており、毎年の試験内容にも反映しています。今後とも葬祭ディレクター技能審査制度にご理解をたまわりたく、お願い申し上げます。
■「葬祭ディレクター」の名称について
葬祭従事者の資格名として「葬祭ディレクター」という名称を選択したのは、国際的に葬祭専門家に対する呼称としてフューネラル・ディレクターfuneral director」という呼称が定着していることからこれを一部和訳して「葬祭ディレクター」とした。
北米では葬祭業を経営する専門家としての資格制度としてあるが、日本では異なり、葬祭業従事者に対して知識・技能のレベルを評価・判定した結果得られる資格であり、これがないと葬祭業を経営できない、従事できないという資格ではない。
しかし、葬祭従事者の人材養成を行い、葬祭およびそれに関連する知識・技能の習熟を図ると共に、消費者保護、コンプライアンス(法令遵守)を重視した葬祭専門家を養成することにおいて目的は共通している。
■葬祭ディレクター技能審査の社会的位置づけ(略)
■1級・2級の区分および受験資格
葬祭ディレクター技能審査は難易度に基づき1級と2級に区分している。その知識・技能の範囲と受験資格は以下のように定めている。
・1級
すべての葬儀における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの詳細な知識と技能。
受験資格は、葬祭実務経験を5年以上有する者、または、2級合格後2年以上葬祭実務経験を有する者。
・2級
個人葬における相談、会場設営、式典運営等の葬祭サービスの一般的な知識と技能。
受験資格は、葬祭実務経験を2年以上有する者。
当協会が認定した葬祭教育機関の所定のカリキュラムを修了した者(見込みを含む)は、2級受験時にその期間を葬祭実務経験に算入できる。但し、修学中に技能審査を受験し合格した時は仮合格とし当該校より修了証明を得た時に正式認定する。
(「葬祭実務」とは?)
当協会が定める「葬祭実務」は以下のとおり。
「葬祭実務とは、葬儀業務に実際に従事してお客様に接していること(受注業務、設営業務、接客業務などに当たっている)を意味し、経験年数とは、上記の業務を恒常的に遂行している期間をいいます。従って勤労学生の場合を除き、在学中のアルバイトなどの期間は葬祭実務経験年数に算入することはできません。」
当協会のいう「葬祭実務」は、葬祭事業者、冠婚葬祭互助会、JA・生協・ホテル・地方自治体・生花店・仏壇店・石材店・社会福祉法人等の葬祭事業部門に働き葬祭実務を行っている者に対してだけではなく、自らは葬祭事業を行わないが葬祭事業者等への人材派遣、請負代理店に所属して実際に葬祭実務を行っている者に対しても葬祭ディレクター技能審査は開かれている。
但し、葬祭実務に従事していることが必要で、葬祭事業者であってもその事業所内で葬祭実務に従事していない期間については葬祭実務経験期間に算入できない。
葬祭実務経験を定められた期間従事していることが条件で、その他国籍、民族、性別、所属事業者その他によって受験資格を一切制限していない。
但し、試験は日本語で行われること、実技試験等の課題は個々の事情による個別対応は行う態勢にないことについては事前に理解いただきたいし、都度要請があっても応じることはできない。
(葬祭実務経験年数の証明)
葬祭実務経験の証明は、事業者が主業務、副業務にかかわらず消費者に対して葬祭事業を行っていることを告知している事業者が行う(証明する事業者が葬祭事業を行っているか不明の場合にはパンフレット等の提出を求めることがある)。
派遣会社(代理店を含む)に勤務する場合、派遣先である葬祭事業者から証明を受ける必要がある。
また期間中に転職等により複数の葬祭事業者に在籍等した場合にはそれぞれの事業者から就労期間に応じて証明を受ける必要がある。事業者は退社等を理由に就労期間中の経験証明を拒否することができない。万一途中期間の証明を受けることができなかった場合には事務局に申し出、代わる証明書類の提出をもって協会が審査し認めることがある。
資格取得後、葬祭実務経験期間について虚偽があり、受験資格に満たないことが判明した場合は、資格認定時にさかのぼって資格を取り消す。その場合、受験資格を満たした後に再受験をすることが可能である。
おそらく2020年9月に行われる葬祭ディレクター技能審査でもって25回を数える。
四半世紀となる。
葬祭業界における人材開発ということにおいては、この制度が果たした役割は大きい。
■追記
4月1日付けで『葬儀概論』(四訂4刷)と『解題 葬儀概論』(改訂3刷)を発行した。
いずれも大部ではないが、必要な追加・修正を施している。