いま整理しておくべき情報 新型コロナウイルス感染症と葬儀⑥

■新型コロナ特措法
3月14日施行された通称「新型コロナ特措法」(正式には2012(平成24)年施行の「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正「死型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律」)
附則
第一条の二 新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。第三項において同じ。)については、新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律(令和二年法律第四号。同項において「改正法」という。)の施行の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、第二条第一号に規定する新型インフルエンザ等とみなして、この法律及びこの法律に基づく命令(告示を含む。)の規定を適用する。
2 前項の場合におけるこの法律の規定の適用については、第十四条中「とき」とあるのは、「とき(新型コロナウイルス感染症(病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和二年一月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限る。)であるものに限る。)にあっては、そのまん延のおそれが高いと認めるとき)」とする。

3 前項に定めるもののほか、第一項の場合において、改正法の施行前に作成された政府行動計画、都道府県行動計画、市町村行動計画及び業務計画(以下この項において「行動計画等」という。)に定められていた新型インフルエンザ等に関する事項は、新型コロナウイルス感染症を含む新型インフルエンザ等に関する事項として行動計画等に定められているものとみなす。

この第56条に「埋葬及び火葬の特例等」という条項がある。

厚生労働大臣は、新型インフルエンザ等緊急事態において、埋葬又は火葬を円滑に行うことが困難となった場合において、公衆衛生上の危害の発生を防止するため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、厚生労働大臣の定める期間に限り、墓地、埋葬等に関する法律(昭和二十三年法律第四十八号)第五条及び第十四条に規定する手続の特例を定めることができる。
2 特定都道府県知事は、埋葬又は火葬を行おうとする者が埋葬又は火葬を行うことが困難な場合において、公衆衛生上の危害の発生を防止するため緊急の必要があると認めるときは、厚生労働大臣の定めるところにより、埋葬又は火葬を行わなければならない。
3 特定都道府県知事は、埋葬又は火葬を迅速に行うため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、前項の措置の実施に関する事務の一部を特定市町村長が行うこととすることができる。

墓地埋葬法
第5条  埋葬、火葬又は改葬を行おうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)の許可を受けなければならない。
2 前項の許可は、埋葬及び火葬に係るものにあつては死亡若しくは死産の届出を受理し、死亡の報告若しくは死産の通知を受け、又は船舶の船長から死亡若しくは死産に関する航海日誌の謄本の送付を受けた市町村長が、改葬に係るものにあつては死体又は焼骨の現に存する地の市町村長が行なうものとする。

火葬に限って言えば、「死亡届を受理した市町村が火葬許可証を交付する」ということを言っている。
これについて特例があるかもしれないと。

第14条 墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。
2 納骨堂の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、焼骨を収蔵してはならない。
3 火葬場の管理者は、第八条の規定による火葬許可証又は改葬許可証を受理した後でなければ、火葬を行つてはならない。

この条項に特例があるかもしれない、というのは火葬許可証が交付されなくとも、第5条においては死亡届があって火葬許可証なので死亡届がなくとも、さらに死亡届の要件になれば死亡診断書、死体検案書がなくとも、と特例は読める。
つまりは医療機関等では収拾おつかない死者発生で公衆衛生上死者個々の診断・検案なしに火葬または埋葬(=土葬)せざるを得ない事態まで想定している。

現在の事態がそこまで至っていない状況にあることは言うまでもない。しかし、歴史的にはコレラ感染症、スペイン風邪の流行という、この特措法が想定せざるを得ない状況があったということである。

■現在の日本の新型コロナウイルス感染症の感染状況
現在の事態は、
日本では(4月21日午前10時半NHK調べ。クルーズ船除く)

感染者数:1万1154人(前日比+347人)
重症:231人
死亡者:263人(前日比+25人)

東京都では(東京都発表資料)
検査実施件数累計:19,875件(前日比+304)
検査陽性者数累計:3,184人(前日比+102)
・入院中:2,507人
・・軽症・中等症:2,447人
・・重症:60人
・死亡:77人(前日比+6人)
・退院:600人
※「退院」には「療養期間経過」を含む。

最も猛威をふるう米国の状況を見てみる。(ジョンズ・ホプキンス大HP 2020年4月21日14時現在)
検査実施件数累計:4,003,551件
感染者数累計:787,370人
死亡者数:42,359人

米国の人口は3億2716万人(2018年)
日本の人口は1億2644万人(2018年)
であるので%で計算すると、

   感染者%   死亡%
日本 0.009    0.002
米国 2.490    0.129

感染者数は検査数いかんにもかかわるので死亡において比較しても、「現在においては」という限定づけであるが、明らかに次元の異なる差がある。
これを「日本はまだまだ平穏だ」と見るか、「日本の状況は近い先にとんでもない事態を迎える」と危機感でとらえるかで大きな違いがある。
専門家の中には、日本の感染者数は1万人強となっているがすでに10万人を超えていると推定する人もいる。その推定によれば感染率は0,79%に跳ね上がり、米国の3分の1になる。

今言えることは、
①感染拡大を制御するには、今がとても大切な時期にあること。
②流行は1回の山ではなく数度に及ぶ可能性があること。
③世界的に考えると最悪、流行は2024年くらいまで続く可能性があること。
④ワクチンは早くて半年後、一般普及は1~2年かかると見たほうがよさそうなこと。
⑤中東、アフリカの実情はまだよくわからないので、対策は日本国内だけではなく、グローバルな国際協調を大切に行う必要があること。

■日本の緊急事態宣言と葬儀

東京都は4月17日緊急事態措置における対象施設を発表。
①基本的に休止を要請する施設 ナイトクラブ、劇場等
②施設の種別によっては休業を要請する施設 小中校等
③社会生活を維持するうえで必要な施設 病院、卸売市場等
に分類。

③の「その他」に「葬儀場・火葬場」と明記されている。

欧米では葬儀について10人以下、5人以下と制限をつけている国があるが、日本においてはその制限はないが、3密を避ける、マスク、手洗い、消毒…という要請下にある。

火葬について新型コロナウイルス感染症とその疑いがある患者の場合、24時間以内の火葬が許可されたが、これは緊急事態宣言とは別である。
新型コロナウイルス感染症が感染症法の指定感染症に指定され二類感染症相当とされたことによる。

感染症法第30条 都道府県知事は、一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体の移動を制限し、又は禁止することができる。
2 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、火葬しなければならない。ただし、十分な消毒を行い、都道府県知事の許可を受けたときは、埋葬することができる。
3 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬することができる。

とあり、二類感染症は移動制限かけられる可能性があり、墓地埋葬法で禁じられている24時間以内の火葬ができる。
ちなみにエボラ出血熱等の一類感染症は、厚生省令で「24時間以内に火葬しなければならない」とされている。

なお、東京の火葬場の一部で新型コロナウイルス感染症の患者の遺体の火葬及び骨上げに遺族の参与ができなくなっている。
しかし、これは行政からの要請によるものではなく、感染拡大の不安から、自らが感染舞台とならないよう火葬場自らが運営ルールとして定めているものである。

民間火葬場のみならず都営火葬場でもそうした運用をしているようである。
これが全国ルールでないことは言うまでもない。

 

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

「いま整理しておくべき情報 新型コロナウイルス感染症と葬儀⑥」への2件のフィードバック

  1. いつも愛読させていただいております。

    ひとつ確認なのですが、
    文中、コレラウィルスとなっているところがあります。
    これはコロナウィルスではないでしょうか。

    1. 金井さま
      ご指摘ありがとうございます。
      おっちょこちょいですね。
      訂正いたしました。

      碑文谷

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