感染症による死亡 新型コロナウイルス感染症と葬儀⑨

■人口動態統計月報による月別死亡数
人口動態統計月報というのがある。
月別の動きを示したものである。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡数はまだここには反映されていない。公表された最新が昨年である2019(平成31、令和元)年11月となっている。

まず厚労省の5月3日12時時点のCOVID-19の発生状況を見る(クルーズ船を除く)。
PCR検査陽性者数  14,839人
入院治療を有する者等11,869人 
退院した者      4,385人
死亡者        492人

死亡者発生は2月であるが3月・4月に多い。約500名であるから月当り約250人としておく。

全死亡月別(日本)
   2018年   2019年
1月 135,504人  137,787人
2月 122,425人  117,286人
3月 120,693人  118,182人
4月 108,670人  111,894人
5月 106,810人  111,119人
6月  98,435人  101,386人
例年、死亡数が最小なのは6月、最多は1月である。
月約10万人~14万人の幅がある。
例年この差があるのは主として寒冷化による高齢者への負担増とインフルエンザの影響だといわれる。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡数を月約250人とし、死亡総数を約11万人とすると0.23%にあたる。

何を言いたいか、というと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は生命を脅かす危険なものであることは言うまでもないが、現在発生している死亡の99%以上が新型コロナウイルス感染症(COVID-19))以外で発生している、というあたりまえのことを押さえておきたいからである。

■結核とCOVID-19
感染症による死亡は今始まったものではない。
まずは結核である。
月に約150~200人が死亡している。
2018年11月には179人、2019年11月には197人が結核で亡くなっている。発症者数は年間約17,000人にのぼる。
全世界では今でも年間約150万人が結核で死亡している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19))は指定感染症で二類感染症相当とされたが、結核も二類感染症に分類されている。

「昔は多くの方が亡くなりました。今は薬(抗結核薬等)が開発され、きちんと薬を飲めば治ります。しかし、病院への受診が遅れたり、診断が遅れたりしたために病気が進行して重症になった場合や免疫状態が著しく低くなった場合には死に至ることもありますので、注意が必要です。」(結核予防会)

結核の起源は紀元前1,000年以上前からであり、日本では「国民病」と言われ、1934(昭和9)年に131,525人が死亡している。

結核は、重症化を防ぐワクチンとしてBCGがあり、抗結核薬等があるので安心しているが、今でも発症者の1.18%が死亡している。
これに対し、新型コロナウイルス感染症の場合、ワクチンも治療薬も確立していない現在、日本では5月3日現在発症者の4.15%が死亡している。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19))は発症まで1~2週間程度、ウイルスを強く出すのは発症2日前程度以降と言われている。
陽性だが無症状の患者が5割以上あり、これからの感染が少なからずいると思われている。
また軽症患者とはいえ重症化が急というケースも少なくない。
結核の場合、感染から2年くらいのうちに発病することが多いと言われているので潜伏期間は長い。
これも高齢や合併症で免疫力が低下し発病することの危険性が言われている。

結核と新型コロナウイルス感染症(COVID-19))とは同じ感染症といっても異なるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を撲滅するのではなく、共生し、適切なワクチンが開発され、治療薬が見つかれば、今の結核と同程度に怖れることはなくなるだろう。
それでもなお、死亡リスクは続くが、現在のような凄まじい不安を抱く必要はなくなるだろう。

■インフルエンザ
もう一つは、ワクチンがあり治療薬もあるとされているインフルエンザとの比較である。

インフルエンザは、日本では1950~60年代には年間死亡者数が7千人を超すことがあったが、2015年以降は2018年が最多で3,325人であった。8割以上が65歳以上の高齢者。
米国では2017-18年に死亡者数は6万人を超えた(covid-19はこれを超えた!)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は未だ感染拡大の途中にあり、専門家の間では2022年頃までの長期戦となる予測が出ている。
どこまで拡大するか、明確ではない。

但し、楽観も戒めるべきであるが、不安を駆り立てるだけではなく、冷静に見る目も必要だろう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の怖さは病気そのものもあるが、社会的病理、経済格差、生活破綻等を大きく招きかねないところにあるからだ。

 

広告

投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/