昨日2020年5月4日、政府は緊急事態宣言の5月31日までの延長を決定した。
感染拡大が終息したとは明らかではないので、これは妥当であろうが、肝心な点が言葉は躍るが依然あいまいである。
自粛に伴う事業者、個人に対する明確な経済的補償を少なくとも今月中に実効しないと大きな犠牲が出るのでは、と強く危惧している。
今のところ事業自粛による倒産企業は100社となっているが、事業停止を余儀なくされている事業者は多く、支払いが迫られる5月末をこのままでは乗り越えられない個人、個人事業者、事業者はとてつもなく多いと思われる。
リーマンショック時の3倍程度は傷が深いだろう。しかも影響は当時とは比較できない幅の広さをもっている。
アナリストの分析では緊急事態宣言以降、失業者は30~40万人におよび、5月末までの延長で計70万人以上になるのではないかと懸念されている。
政治家は自らの生活が保障されているものだから、こうした不安、恐怖に対して鈍い対応しかできていない。
このままでは社会が壊れる。
政府には覚悟をもった生活者の下支えの案を5月10日頃までにはまとめ、5月末までに支払い実行を済ませることを要求したい。
緊急事態なのに政策起案、手続き、実行は平時の対応でやっていたのではもたないのは明確である。
さて、4月25日に「私的な提案」としてCOVID-19感染拡大下の葬儀のあり方について提案した。
https://hajime-himonya.com/?p=4387
それをより具体的にプロトコル(標準手順)として提案したい。
COVID-19感染拡大下の葬儀プロトコルの提案①
1.基本
■提案の対象
この提案は、葬儀社(葬祭事業者)のみならず、霊柩事業者、火葬事業所、係る宗教者にも理解を求めるところです。
■確認すべき基本
葬儀(死者を送ること)の原点として徹底確認したいこと。
①葬儀は、死者の発生に伴い、いわゆる葬式儀礼を行うか否かによらず、必然的に全ての事例において行われるべきものであることを理解します。
②欠かせないのは、死者(ご遺体)の尊厳の確保とご遺族等の心情への特別な配慮です。
③対処においては、これまでの形式偏重ではなく、個々の具体的事例に添った実質的な対応を心がけます。
④適切な公衆衛生に配慮します。
⑤個人情報に適切に配慮し、一切の差別、偏見を信念をもって排除します。
■ご遺体に係わる従事者に求めること
①ご遺体を取扱う者は、マスク、ビニール手袋の着用、手洗い・消毒等の公衆衛生上の配慮を行うことを日常的なものとして常識化しなければなりません。
②上記の措置は、ご遺体の尊厳を守り、ご遺族等への配慮として欠かせない、重要なものであることの認識を徹底させてください。
■葬儀に係わるすべての人に求めること
①死者(ご遺体)を軽視、差別、邪魔者扱いを厳にしないこと。
②どんな状況下にあっても、制限や限界はあるにしても、ご遺族等の心情・意向について配慮する精神はけっして失わないこと。
③ご家族、ご友人がいる場合はもちろんですが、たとえ「おひとり」(単独者)であっても、どんな人・境遇であっても「弔われる権利」があることを心に深く刻むこと。
2.COVID-19での死亡者の取扱いについて
COVID-19による死亡者は、全死亡者の1%未満です。それゆえ取扱うことは稀少でしょう。だが注意して取扱う必要があります。
この取扱いにおいては、
①礼意に特に注意し、尊厳をできるかぎ確保するよう努め、複雑な心境にあるご遺族等を適切に配慮する必要があります。
②適切な感染防御をしますが、ご遺族等には事情を丁寧に説明し、けっして粗略に扱われたという想いが生じないよう注意が必要です。
③事後において、死者、ご遺族等が不当な非難、偏見、差別に晒されないよう注意しましょう。
④宗教者も正確な理解に努め、不勉強からくる不安から適切でない対応に走ることがないように努めなければなりません。
3.COVID-19による死亡者の取扱いの実際
(1)医療機関から葬儀社へ
①(死亡届等)葬儀社はご遺族等から死亡診断書を預かり、記載された死亡届を市区町村役所に届け出て、火葬許可証を得ます。
※厚労省通達により、医療機関は葬儀社等に対してCOVID-19による、またはその疑いのある死者であることを伝達徹底するよう求められています。
②(納体袋への収容)医療機関は、遺体に対して死後のケア(死後の処置、エンゼルケア)の後に、非透過性納体袋に収容・密封後に、納体袋の表面を消毒し、葬儀社が持参した木棺に納棺し、これを葬儀社に引渡します。
③(柩の安置)火葬場の火葬時刻(多くは最終時刻または終了後)までに時間がある場合には原則として医療機関指定の場所に納棺した状態で安置します。
納棺された状態では、葬儀社はマスク着用、ビニール手袋の着用は必須ですが、通常であればもはやウイルスとの接触感染のリスクはありません。
(ご遺体からの飛沫感染がないことは言うまでもありません。)
したがって、保健所、医療機関が許可した場合には、葬儀場や宗教施設(寺・教会等)へ安置することができます。
④(医療機関で非透過性納体袋への収容ができない時)非透過性納体袋の準備と収容、密封後の消毒は、原則として医療機関等が行う、とされています。
但し、当該医療機関によっては防御材の不足や人員の不足で対応できていない場合があります。
その場合、葬儀社において非透過性納体袋の用意や防御服の準備、着用訓練が行われていない場合には取扱うことができません。
(注)「防御服」である必要は必ずしもありません。厚労省によれば「継続的に遺体の搬送作業及び火葬作業に従事する者にあっては、必ず手袋を着用し、血液・体液・分泌物(汗を除く。)・排泄物などが顔に飛散するおそれのある場合には、不織布製マスク、眼の防護(フェイスシールド又はゴーグル)を使用してください。衣服への汚染を避けるため、ディスポーザブルの長袖ガウンの着用が望ましいです。」とされています。
提案:(防御服の装着・脱衣)
防御服の取扱いについて心配している葬儀社が多くいますが、YouTubeで「自衛隊中央病院」を検索すると、防御服の装着・脱衣方法について動画でわかりやすく解説されています。これを参照してください。
佐賀県から防護服の着脱方法がpdfで示されています。
https://kansen.pref.saga.jp/kakotopics/kakotopics/sarskanren0406/manyuaru/38.pdf
提案:(感染遺体の取扱い葬儀社の選定)
防護服等の備えにも限界があれば、各区市単位で「COVID-19死亡者取扱い事業者」を選任し、そこに資材を集中します。とりあえず全葬連と全互協で各1事業所を選定するとよいでしょう。これは自治体、保健所、病院にも伝達しておきます。特に特定市区に死亡者が集中した時には隣接市区の選定事業者が支援します。
個々の事業者で不可能なことも団体であれば可能になります。いずれにしても、どんな死者(ご遺体)であっても葬儀社(団体)が責任をもって取り扱う体制の確保が社会的に求められています。
⑤(医療機関の責任)取扱い医療機関はそこでなす死後のケア、非透過性納体袋への収容、消毒、納棺…といった一連の作業をあまりに混乱して手が回らないという事情がなければ、次の段階で感染拡大しないよう責任をもって行うことが求められています。
とかく各地医療機関で見られる「嫌な作業、面倒な作業は葬儀社に押しつける」ということはけっしてあってはなりません。
(2)ご遺体の搬送~火葬場
①(極力医療機関から火葬場へ)ご遺族等に説明のうえ意向にも配意しつつ、極力そのままの状態で火葬するよう努めてください。
また、ご遺体の搬送に際し、ご遺体が非透過性納体袋に収容、密封・消毒されていて納棺されている限りにおいては、マスク着用・ビニール製手袋着用以外の特別の感染防御策は不要です。
②(手袋等)納棺、搬送に従事する者は、必ず手袋を着用します。
血液・体液・分泌物(汗を除く。)・排泄物などが顔に飛散するおそれのある場合には、不織布製マスク、眼の防護(フェイスシールド又はゴーグル)を使用してください。衣服への汚染を避けるため、ディスポーザブルの長袖ガウンの着用が望ましいです。また、これらの器具が汚染された場合には、単回使用のものは適切に廃棄し、再利用するものは適切な消毒を行ってください。
③(礼意)納棺、搬送に従事する者は、ご遺体に対し、納棺・搬送の作業の前後に、ご遺体の尊厳を確保するために、礼や合掌等により、ご遺体へ礼意を失わないよう特に注意しなければなりません。
④(移動制限)COVID-19は二類感染症相当の指定感染症となっていて24時間以内の火葬が可能です。移動には注意が必要なため、ご自宅、葬儀場への安置は極力避け、火葬時間との関係で待ち時間が生じる場合には原則として医療機関等において安置・保管するようにします。保健所、医療機関等の理解を得れば葬祭場等での安置も可能です。
※COVID-19による死亡者又は疑いのある場合には24時間以内の火葬が可能とされていますが、一部報道にありましたが、葬儀社が疑念があるからと勝手にできるものではありません。あくまで死亡診断書に基づいて死亡届が出され、これにより火葬許可証が発行されるので、死亡診断書に記載のない場合には24時間以内の火葬は許されていません。
⑤(搬送)火葬場への搬送には、納棺された状態で、霊柩自動車(普通)を使用します。
⑥(搬送車の消毒)納棺されている状態ではご遺体からの感染は通常ありません。
リスクは、納体袋の破損等で体液等の漏出があり棺外に漏出した場合です。めったにありませんが、柩の外側からの目視チェックはしてください。搬送作業に係わる者は上記②の注意事項を守り、終了後は搬送に使用した車を消毒してください。
(3)火葬
①(火葬)火葬後の焼骨(ご遺骨)から感染することはありません。したがって骨上げ(拾骨)をご遺族が行うこと自体は問題ありません。
②(ご遺族等の立ち入り禁止する火葬場の例)一部の火葬場では火葬場へのご遺族等が入ることを拒否している事例があります。
これは納棺された状態、焼骨(火葬後のご遺骨)からの感染を危惧したものではありません。ご遺族等には濃厚感染者がいて発症はしていないものの感染者である危険性がある、という理由で、ご家族等からの火葬場職員への感染、ひいては火葬場の一時使用停止、となることを危惧しての当該火葬場の設けた運用ルールによります。東京都の一部火葬場の運用ルールで、全国的には少数例です。
③(骨上げ)担当者は、礼意を失しないよう、使い捨てのビニール手袋の上に白手袋をして、骨上げをします。
④骨壺を骨箱に収めて(火葬済みとの押印した火葬許可証を添え)、風呂敷に包んだうえで(可能なら手提げの大きな紙袋に収容し)、ご遺族等へ引渡します。
⑤担当者は、対人感染を防ぐために、常に(医療機関等との面接、ご遺族等との面接、火葬場の職員等との面接、宗教者その他との面接において)マスクの着用、随時の手洗い、携帯の消毒液を保持します。ビニール手袋は使い捨てです。途中では袋に入れ、事務所に帰った後に廃棄します。
(4)ご遺骨の安置~葬儀
①(ご遺骨での葬儀)ご遺骨を安置以降には、ご遺族等の希望により宗教者が立ち会う等の通常の葬送儀礼が可能です。
ご遺骨状態からの感染リスクはありません。
②(葬儀施行)ご自宅、寺院等、葬儀場にて葬送儀礼をすることは可能です。
但し、他の葬儀同様に、感染の疑いがある者は参加しないこと、会葬者同士による感染が生じないよう適正な公衆衛生上の配慮は必要になります。
③(葬儀の有益性)改めて流行終結後に本葬、お別れ会を行う場合でも、ご遺族等の限定した範囲内の密葬等を火葬終了から2週間程度以内において、(あくまでご遺族等の希望によりますが)宗教者等を招いて行うことはご遺族等の心情を考えると有益であることが多いです。
④宗教者は、直接面接がかなわない場合でも電話等で檀信徒もしくは会員である信者と十分なコミュニケーションを行い、適切な配慮を行う必要があります。
宗教者は、檀信徒等密接な関係のある故人、ご遺族等に対して寺、神社、教会として責任があることを深く自覚することが必要とされます。
宗教者が過剰な不安から葬儀拒否することは厳に戒められる必要があります。
葬儀一般のプロトコルについては次回記します。