緊急事態宣言解除後の葬儀のガイドライン

■緊急事態宣言の解除までの経緯

①4月7日~5月6日7都道府県に緊急事態宣言
埼玉県、千葉県、 東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県を実施区域
②4月16日~5月6日上記7都道府県に加えて北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府を緊急事態措置実施すべき区域に加えた。それ以外の県においても緊急事態宣言の対象に。
③5月4日~5月31日緊急事態宣言の延長
但し、「特定警戒都道府県」(東京都及び大阪府、北海道、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府、兵庫県、福岡県の13都道府県)と「それ以外の県」で分けた対応。
「それ以外の県」においては、「三つの密」の回避を中心とした、「より社会経済活動の維持との両立に配慮した取組に段階的に移行していくこと」とし、「新しい生活様式」が提唱される。
④5月14日39県の宣言解除(宣言実施区域は北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県)
⑤5月21日近畿3府県(大阪、兵庫、京都)の宣言解除商品。
⑥5月25日残った東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道の宣言解除し、緊急事態宣言は全面解除
⑦5月25日緊急事態宣言解除後の方針
「緊急事態宣言が解除された後は、一定の移行期間を設け、外出の自粛や 施設の使用制限の要請等を緩和しつつ、段階的に社会経済の活動レベルを引き上げていくこととなる。
その場合において、感染拡大を予防する「新しい生活様式」の定着や、業種ごとに策定される感染拡大予防ガイドライン等の実践が前提となる。
また、再度、感染の拡大が認められた場合 には、的確な経済・雇用対策を講じつつ、速やかに強い感染拡大防止対策等を講じる必要がある。」
今後段階的に進むだろうが、おそらく全面解除になるのは7月中旬であろう。

■新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の特徴
以下、5月25日の基本方針に基づく。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000633501.pdf

・ 一般的な状況における感染経路の中心は飛沫感染及び接触感染であるが、閉鎖空間において近距離で多くの人と会話する等の一定の環境下であれば、咳やくしゃみ等の症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされている。
また、発症前2日の者や無症候の者からの感染の可能性も指摘されている。一方、人と人との距離を確保することにより、大 幅に感染リスクが下がるとされている。
・ 集団感染が生じた場の共通点を踏まえると、特に①密閉空間(換気 の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③ 密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる) という3つの条件(以下「三つの密」という。)のある場では、感染を 拡大させるリスクが高いと考えられる。
また、これ以外の場であっても、人混みや近距離での会話、特に大きな声を出すことや歌うことには リスクが存在すると考えられる。激しい呼気や大きな声を伴う運動についても感染リスクがある可能性が指摘されている。
・ これまで、繁華街の接待を伴う飲食店等、ライブハウス、バー、スポーツジムや運動教室等の屋内施設においてクラスターが確認されてきたが、現在では医療機関及び福祉施設等での集団感染が見受けられる状況であり、限定的に日常生活の中での感染のリスクが生じてきているものの、広く市中で感染が拡大しているわけではないと考えられる

■新しい生活様式、業種別ガイドライン以外の基本要請事項
・ 風邪症状など体調不良が見られる場合の休暇取得、学校の欠席、 外出自粛等の呼びかけ。
・ 感染リスクを下げるため、医療機関を受診する時は、予め電話で 相談することが望ましいことの呼びかけ。
・ 新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の考え方をわかりやすく周知。
・ 感染者・濃厚接触者や、診療に携わった医療機関・医療関係者その他の対策に携わった方々に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないことの呼び かけ。
・ 従業員及び学生の健康管理や感染対策の徹底についての周知。
・ 家族以外の多人数での会食を避けること。

■葬儀業ガイドライン
5月29日、葬儀業「新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドライン」(第 1 版)が全葬連と全互協の連名により公表された。
https://www.zensoren.or.jp/download/index/sougi_guideline_20200529.pdf
https://www.zengokyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/05/e80b485c4979910cfe54ba7bb12dafc2.pdf

■その他重要な留意事項 人権への配慮、社会課題への対応等
 ここには重要な課題が列挙されている。
 葬儀においては⑦でコロナウイルス感染症(COVID-19)の死者への「尊厳を持ったお別れ、火葬等」について書かれている。一部において「尊厳を持ったお別れ、火葬等」が不安等から死者との別れが過剰に阻害されたことへの反省と見られる。
 また、これはCOVID-19による死者の場合だけではなく、流行を理由として見られる過度な葬儀抑制を戒めるものでもあろう。

① 新型コロナウイルス感染症への感染は誰にでも生じ得るものであり、感染状況に関する情報が特定の個人や地域にネガティブなイメージを生まないようにすることが極めて重要である。特に、患者・感染者、その家族や治療・対策に携わった方々等の人権が侵害されている事案が見られていることから、こうした事態が生じないよう政府は適切に取り組む。
② 政府は、海外から一時帰国した児童生徒等への学校の受け入れ支援やいじめ防止等の必要な取組を実施する。
③ 政府及び関係機関は、各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものとするとともに、女性や障害者などに与える影響を十分配慮して実施するものとする。
④ 政府は、新型コロナウイルス感染症対策に従事する医療関係者が風 評被害を受けないよう、国民への普及啓発等、必要な取組を実施する。
⑤ 政府及び地方公共団体は、マスク及び個人防護具、医薬品、医薬部 外品、食料品等に係る物価の高騰及び買占め、売り惜しみを未然に回避し又は沈静化するため、必要な措置を講じる。
⑥ 政府は、地方公共団体と連携し、対策が長期化する中で生ずる様々 な社会課題に対応するため、適切な支援を行う。
・ 長期間にわたる外出自粛等によるメンタルヘルスへの影響、配偶者暴力や児童虐待。
・ 情報公開と人権との協調への配慮。
・ 営業自粛等による倒産、失業、自殺等。
・ 社会的に孤立しがちな一人暮らしの高齢者、休業中のひとり親家庭等の生活。
・ 外出自粛等の下での高齢者等の健康維持
・介護サービス確保。
政府及び地方公共団体は、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方に対して尊厳を持ってお別れ、火葬等が行われるための適切な方法について、周知を行う。

 ■緊急事態宣言解除後
緊急事態宣言が解除されたといっても新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリスクが止んだわけではない。
ワクチンの開発が100以上行われていて、中には年内に開発完了見込みだとされているものがあるが、国民レベルにいきわたることを考えると2~3年かかるだろう。
日本国内では抗体検査のシミュレーションでは0.1%程度であるから、リスクが軽減される見込みの6割以上が目安とされる感染率には遠く及んでいない。
10月以降のインフルエンザ流行と重なり、今冬には大きな波がくることも危惧される。1918(大正7)年~1920(大正10)年に大流行したスペイン風邪の場合には2年目以降がウイルス変異もあり狂暴化している。全世界で1700万人から5千万人(一説では1億人)が死亡したと推定され、国内でも39万人(一説では45万人)が死亡したと推計されている。
COVID-19については、まだまだ見通せないことが多い。

また、今回は世界的な流行で、各国間の人的交流が遮断したことや緊急事態宣言下での経済活動自粛がもたらした経済不振、失業や雇止めの大量化等により社会的に既に大きな傷をもたらし、問題は極めて切迫している。
緊急事態が解除され、おそらく8月頃から全ての規制が解除されるであろうが、けっして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以前に戻るわけではない。さまざまな変化が余儀なくされるだろう。

国内だけではない。世界的に従来から格差により問題を抱えていた層を直撃し、大きな問題を引き起こしている。

「いのち」の問題というならば、COVID-19に感染するかどうかではなく、もっと拡がりをもった視点で考えていく必要があるように思う。

 

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/