ワクチン接種順位から高齢化の問題を考える

■COVID-19ワクチン接種順位問題

ワクチンについて安全性はいまだ明らかとはいえないが、2021年の2月以降の接種開始が見込まれる様子になってきた。

12月10日の厚労省厚生科学審議会ワクチン分科会の資料等を見ると、おおまかな順位は、医療従事者、(社会機能維持者)⇒高齢者⇒高齢者以外の基礎疾患を有する人⇒希望する一般の人、でいずれも本人が同意した場合で強制はされない。
一般に順番が回るのは、早くて6月以降だろう。

特に優先されるのはCOVID-19の治療に直接携わっている医療施設の従事者、救急隊員、保健師等となる。

介護施設等の従事者については、感染リスク、施設クラスターが危惧されることから医療従事者と並んで必要性が唱えられているが、ワクチンの特性を見て判断することとなっている。

ワクチンは万能ではない。
よく「ワクチンによって感染防御」といわれるが、実証できるのは発病予防、重症化予防で、感染予防は実証困難といわれる。
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000692193.pdf

つまり発症、重症化は予防するが感染は予防困難で、ワクチンを接種したからといって感染しないわけではなく、感染した場合には二次感染もありうるので感染の拡がりを抑制する効果は必ずしも期待できない。
また高齢者の場合は効果が低いといわれる。

したがって厚労省が考えている重症化リスクの高い高齢者優先よりも活動的で感染の源となる可能性の高い20~50代を優先させるべきではないかとの意見もある。

米国では接種順位等は連邦政府ではなく各州で決定される。
日経12月15日によると、
「これから各自治体や施設は接種対象者を具体的に選ぶ課題に向き合う。米疾病対策センター(CDC)は12月上旬に感染リスクの高い医療従事者と介護施設の入居者を優先する指針を決めたが法的拘束力はない。
各州・地域は最適解を探る。米カイザー・ファミリー財団の集計によると、首都ワシントンと西部ユタ州は第1弾の接種対象に介護施設の入居者を入れなかった。西部ネバダ州や同ワイオミング州は警察官を含めた。
ひと言で医療従事者といっても幅広い。南部アラバマ州はコロナ患者と触れあって感染するリスクに応じて3グループに分けた。CDCは医師や看護師がワクチンの副作用で仕事を休む可能性を考慮し、同じ医療現場で働く人は接種時期をずらすよう促した。」

「社会機能維持者」にどの職種が選ばれるかは今後の課題である。遺体を取り扱う葬祭関連の従事者が含まれて当然と思うが未確定である。

■高齢化の現状と考え方

高齢化率28.7%

2020年9月20日総務省が敬老の日にちなみ発表した「統計から見た我が国の高齢者」によれば、高齢者人口(65歳以上人口)は世界最高で、高齢化率は28.7%(3617万人)と過去最高を示した。
うち80歳以上が9.2%(1160万人)、90歳以上は1.9%(244万人)である。

高齢化率は、1955(昭和30)年5.3%、1975(昭和50)年7.9%、1995(平成7)年14.6%、2015(平成27)年26.6%、と戦後一貫して伸び続けている。
郡部に行けばすでに30%を超えている地域はざらで、中には40%を超えている地域もある。
ちなみに50%を超えると自立できない「限界集落」と言われる。

介護者の視点

今後の問題は高齢者問題もそうだが、介護者である家族の問題が大きい。

朝日12/20「介護とわたしたち」で
「働きながら介護する人は約346万人。要介護者が増える一方、未婚率の上昇や共働き世帯の増加など家族のあり方は変化し、家族が介護する力は下がっている。介護離職者は年約10万人で政権が目指す「ゼロ」にはほど遠い。仕事と介護の両立を支援する動きはあるものの、働く介護者の視点に立ったサポートが十分とは言えない状況だ。」
とこの問題を論じているが、とかく「介護される人」視点で論じられることが多いが、「介護者」視点は極めて重要である。


女性の寿命中位数は90.24年

厚労省「令和元年(2019年)生命簡易表」によれば、平均余命は男性81.41年、女性87.45年となっている。

より実態を反映していると思われる寿命中位数(生命表上、出生者のうちちょうど半数が生存すると期待される年数)は、男性84.36年、女性は90歳を超し、90.24年となっている。

まだ「人生100年」とはいえないが、女性に限れば少なくとも「人生90年」にすでに到達している。

身近でも、父、2人の叔父は80代で死亡だが、母、義母、2人の叔母は90歳を超えて死亡している。
もっとも姉は72歳、従妹は62歳、と必ずしも長命とはいかなかったが。

だが女性の長寿化はいいことだらけではない。
80歳を超えると認知症リスクは高まり、要介護期間は男性は4年程度が平均的だが、女性は8年程度が平均的といわれる。

全死亡の64.2%が80歳以上の超高齢者

厚労省「2018年人口動態統計(確定数)」に基づき計算すると、65歳未満での死亡は1割を割る9.5%(男性12.2%、女性6.6%)である。
「現役での死」はいないわけではなく、私の友人たちのように40代、50代で死亡した人もいるが、少数となっている。

65歳~79歳の死亡は26.4%(男性34.2%、女性18.1%)であり、80歳以上は64.2%(男性54.0%、女性75.3%)となっている。
80代での死亡が全体としては最多で36.8%(男性19.3%、女性36.0%)となっている。


戦後変わった「人生」に対する長い常識

昭和の初期に80歳超の死亡は全体の5%程度で、長く80歳を超えての死亡は「長寿を全うした」と言われ、祝われさえしたものである。
現在は80歳以上の死亡が6割超とあたりまえになり、90歳を超えないと「長寿を全う」とは言われない時代となっている。

近世以前は平均的な人生は40年以下であることは確かであろう。長寿者がいなかったわけではなく極めて少数であった。
近世以降の江戸、明治、大正の時代の平均寿命は40~50年であったから、特に戦後の長寿化は日本人の「人生」に対する長い常識をくつがえすものである。

死の本質は「いつ、だれに、どのように起こるか不明」なのだが、こうした状況がいつしか「死は高齢者、しかも超高齢者のもの」という錯覚を生んでいる。

私も20代の頃は「人生40年」と仮定していたものだが、いつのまにか自覚なしに生き延びて1月で75歳、後期高齢者の仲間入りをする。
自動車免許更新の高齢者研修で認知症検査等が課せられた。
幸いかどうかは別にしてクリアした。
でも衰えは日に日に自覚することが多くなった。

最近、人間には生物的のみならず社会的に寿命がある、という想いを強くしている。
残念ながら超高齢化は高齢者自身にも家族にも、幸せだけではなく、さまざまな負を課している。
どちらかというと負の割合が大きく深刻である。

ワクチン接種順位問題にしても、高齢者は重症化リスクが高く医療崩壊の因となることはわかるが、社会全体としては現役世代優先に切り替えるべきではないか、とつれづれに思っている。

高齢者になってわかることは、自分にとっての気になる「未来」とは、自分の残された時間のことではなく、次世代、次々世代のことだ、ということである。
そちらの未来のほうがより切実である。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

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