東京新聞2021年2月12日に「こちら特報部」でコロナ禍の火葬場の遺体の取り扱いについて大きなスペースを割いて特集している。
今回の特集について私も早い段階から協力していてコメントを寄せている。
今、唯一の都営の火葬場である瑞江火葬所ではCOVID-19で死亡した遺体の火葬を1日10体まで引き受けている。
1日周辺住民との協議で25体までと火葬数を取り決めており、その中の10体であるから積極的である。
だが当初からそうではなかった。
昨年の第1波期にはかなり消極的であった。
東京都は民営の火葬場の取り扱い比率が7割。
民間とはいえ公共性は高い。
民間火葬場の取り組みも当初は消極的で、今多少改善されたとはいえ、積極的とはいえない。
今も多くの火葬場では遺体の引き受けから重装備である。
本来、非納体袋に収容され、納棺された上であるから、遺体からの感染は想定しにくい。
そもそも飛沫感染は遺体の場合にはない。
残るは接触感染のリスクだけであるが、便、体液等に直接素手で触れるのでなければ、このリスクもない。
事故が起き、棺が開き、非納体袋が破れ、さらに便、体液等が漏出し、素手で触れるのでなければリスクはない。
棺扱い時に使い捨て手袋を着用するだけで十分である。
今、医療機関で非納体袋へ収容され、ほとんどの場合は納棺までしている。
したがって、遺体の搬送事業者、葬祭事業者、火葬事業者の場合に遺体からの感染リスクはほとんどない。
使い捨て手袋さえ使用していれば十分である。
火葬場では火葬後の火葬炉の清掃、消毒は必要である。
だが、火葬後の骨上げ(拾骨)時には遺骨からの感染リスクはゼロである。
火葬場が重装備し、火葬の遺族の立ち会いを制限するのは、遺族が濃厚接触者であるまいか、という不安からである。
通常の場合、遺族が濃厚接触者であれば外出制限がかかるので医療機関にも葬儀場にも火葬場にもこない。
万が一来ても、怖いのは飛沫感染なので、マスク、1~2mの距離を取ることで防げる。
不安が強くても、遺族の遺体と別れる権利を奪うことはできない。
死者の尊厳、遺族の権利と公衆衛生の両立は充分に可能なのだ。
葬祭従事者、遺体搬送従事者、火葬場従事者に十分にこのことが理解されていない。
不安からくる過度の対策費を遺族が取り扱った葬祭事業者から請求された事例もあるという。
恥ずかしいことだと思う。
葬祭事業者、搬送事業者、火葬事業者はエッセンシャルワーカーである。
冷静に適切な対策をしながら、感染症患者遺体の適切な取り扱いは義務である。
エッセンシャルワーカーとしての自覚が乏しいから、適切な対策よりも不安が先立ち、自らの仕事を全うできない人が出てくる。
もとより、こうした中で適切な対応をしている葬祭事業者、搬送事業者、火葬事業者がいることを忘れてはならない。