緊急事態宣言の一時解除に想う 情報の分析と社会的空気

■首都圏除き緊急事態宣言先行解除

政府は2月末で愛知、岐阜、大阪、京都、兵庫、福岡について緊急事態宣言の先行解除を発表した。
首都圏である東京、神奈川、埼玉、千葉については継続とした。

当初政府は、首都圏についても期限とした3月7日をもって、「特段の事情がない限り」、再延長せずに「解除」を明記しようとしたようだが、専門家の抵抗で見送ったらしい。

1月18日に国内の陽性者数は7,844人を記録したが以降下降線を辿った。
2月26日では1,075人である。
大きく下降したことは事実だが、この数字は、第1波である2020年4月のピーク約700人を上回る。
第2波のピークである8月上旬は約1,400人であることから考えても、それほど低い数字ではない。

専門家が「もっと降りきらないと第4波が心配」と言うのも肯ける。

緊急事態宣言は陽性者の数ではなく、「医療崩壊を防ぐ」1点にある。
「病床使用率」でいえば、ステージⅢが20%以上、ステージⅣが50%以上となっているが、ステージⅣを超えているのが埼玉と千葉で、他の対象地域はステージⅢ。

「重症使用率」はステージⅢが20%以上、ステージⅣが50%以上であるが、ステージⅣがなく、ステージⅢが東京、愛知、大阪、兵庫、福岡である。


「10万人当たりの療養者数」は、ステージⅢが15人以上、ステージⅣが25人以上、となっているが、ステージⅣにあるのが千葉と東京。ステージⅢにあるのが埼玉、京都、福岡。

今回の解除地域は、ステージⅢにはあってもステージⅣにはないというので選択されたのであろう。
神奈川もステージⅢはあるがステージⅣはない。だが、首都圏一体ということで解除にはならなかったし神奈川も希望しなかった。

そもそも日本医師会等ではステージ4はもとよりステージⅢでも解除すべきではない、と主張していた。
首都圏を除き解除することについて専門家は、経済問題を持ち出されると解答がなく、しぶしぶ了承ということのようだ。

解除地域についても制限撤廃ではなく、飲食が20時までだったのが21時に1時間だけ延長、補償は6万円が4万円に減額が2週間続く。

■感染の状況

世界の感染状況は、ジョンズ・ホプキンス大学のCOVID-19 Dashboard によれば(2021年2月27日11時22分現在)
陽性者総数は1億1千万人を超えて1億1337万5335人
死亡総数は250万人を超えて251万5896人

陽性者数の多い順は米国、インド、ブラジル、ロシア、英国…
死亡数が多い順は米国、ブラジル、メキシコ、インド、英国…

1月下旬より低下が見られる。
しかし、感染者数の激増は2020年10月下旬からで、今の数字は激増の初期の数字である。まだ予断を許さない状況だ。

猛威をふるった米国でも1月10日頃から低下傾向にある。
変種が騒がれた英国でも1月下旬以降低下傾向にある。
未だ低下傾向が見られないのはブラジルである。

国内では2021年2月26日現在
陽性者総数は431,221人
死亡総数は7,839人

GoogleによるJapan Covid-19 Forecast Dashboardによれば
2月25日から3月24日の陽性者数の予測は23,165人となっており、1日あたりにすると827人となり現在の約8割となる。

低下はするものの、それほど大幅ではないという予測である。
理想的な低下の割合は7割とされるので、そこまでは期待できないようだ。

死亡者は今後1か月でさらに1,200人ほど増加する見込みであるから3月末で1万人を超えるかもしれない。


もちろんこれは予測であって、この予測自体が常に変化している。

■ワクチン

ワクチンについては、英国ではアストラゼネカ社製が2020年12月8日から、米国ではファイザー社製が12月14日から、モデルナ社製も12月中に接種開始されている。

日本では2月17日よりファイザー社製について開始しているが、最初は特定医療機関からである。4万人対象。
その後に一般医療機関。

高齢者対象は4月12日以降で、供給量が未定ではあるが、高齢者分は6月末まで必要量を確保する見通し。


5~8月以降になると現在国内では未承認のアストラゼネカ社製、モデルナ社製の供給も順次開始されるだろう。


一般への接種開始は8月以降になると思われ、接種完了は年内中というのは難しそうである。

見通しが困難なのは、政府の情報開示が遅れているからではなく、供給体制の問題で供給予測が立っていないためである。
これでも日本を含む先進大国の奪い合いが起こっている。
世界の開発途上国へも平等にいきわたらせる必要がある。

ワクチンには副反応がある。
英国では2020年12月~2021年1月の716万人の接種のうち、アナフィラキシー等の激しいアレルギー反応は114件、0.0015%、それを含む副反応が22,820件、0.31%あったと報告されている。ほとんどが一時的なものであるという。

日本では今先行接種が行われているが、厚労省の1月20日発表では1万数千件のうち2件の副反応の疑いが報告されている。皮膚及び口腔内のアレルギー反応(じんましん)1件と冷感・悪寒戦慄1件である。0.017%となる。


ワクチン一般に副反応があるので今回のワクチンが特別リスクが高いわけではなさそうである。

まだデータが十分ではないが、軽度の副反応は1千件に2~3件、強度の副反応は10万件に1件程度であろう。

ワクチン接種の先頭を走っているのがイスラエル。1月末までにファイザー社製を2回接種したのが170万人。その結果、
「保健省は2月13日までに得られたデータを分析。2回目の接種から2週間後には、死亡に至ることを防ぐ効果は98.9%▽重症化を防ぐ効果は99.2%▽入院を防ぐ効果は98.9%▽感染を防ぐ効果は95.8%――だったという。」(朝日新聞2月22日)

 

■社会の緊張耐久度の問題

コロナ禍が始まり約1年。
この間の動きを見ていると、個人はともかく社会の緊張耐久度はよくて持続期間は1カ月半程度であるように思える。
1カ月半以上継続することは難しい。

その意味では、お上が発した緊急事態宣言であっても、時間の経過で社会的には緩みが出てくる。

私はいささか緊急事態宣言を小馬鹿にしていたところがあったが、1月に2回目が発せられると、社会の空気が一変した。
12月より危険性は専門家、自治体、マスコミが警鐘を鳴らしていたが、なかなか人々は本気にならない。
宣言が発出されると、20代の若者たちの多くは従順に従い効果を発揮した。

だがいつまでも継続するわけではない。
1カ月を超えると次第に緩み始める。

専門家が解除はまだ早い、といくら言っても2カ月を超えては次第に通用しなくなる。

これは「良い悪い」の問題ではないように思う。

個人として見ればそれぞれの判断に従った行動がありうるが、社会的空気となれば自ずと限界がある。

今回解除地域が2週間単位×2回の単位で実質制限撤廃にもっていくプログラムを用意しているようだが、かなり実際的である。
これによって再度の感染拡大を招いたとしても、社会的には致し方ない。
第4波を招いたら、その時にまた対処するしかない。

むしろ今することは療養・治療体制の拡充である。
こうした体制充実は緊急時にはできない。
少し余裕のある時に作るしかない。
第3波で対応できなかったのは第1波が過ぎた後に次の準備に備えることが不十分だったからだ。
財務省の愚かだったことは医療への補助を8月には打ち切ってしまったことだ。

2020年の5月頃のことを思い起こす。
私が会った専門家たちは、その時点で7月、11月の危機を見抜いていた。
ということは厚労省にもその知見は届いていたはずである。
それを政府としては無視したことが、その後の混乱を招いたように思う。

第4波が結果的にこないのであれば、備えは「ムダ」ではなく「幸い」なことなのである。準備だけはしておくべきだろう。

 

■死者の尊厳ある見送りを

いまだCOVID-19で亡くなった方の病院での遺族の対面、葬儀場や火葬場での対面ができない事態が多くで継続している。

火葬場での立ち会い、拾骨すらできない事例がまだある。

また、その他の方々においても、8割が病院・施設での死であるから、十全な看取りが制限されている。
「仕方がない」を言い訳に十分な別れ、見送りが欠けているケースが少なくない。

尊厳あるお別れと公衆衛生は両立できるし、させなければならない。

事業者も遺族もこの大事を心に刻む必要がある。

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

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