家族葬の多義化―「コロナ禍と葬儀に与えた影響(続)」

報告

本日(2022年12月25日)の毎日新聞の「滝野隆浩の掃苔記」で私が取り上げられた。
Facebookでも紹介しておいたが、ここでも報告がてら詳しく述べる。
https://mainichi.jp/articles/20221225/ddm/012/070/073000c

日本葬送文化学会の23年1月刊行予定の会誌に掲載する「コロナ禍と葬儀に与えた影響(続)」を11月末に脱稿した。
脱稿直前に入ったニュースが新型コロナウイルス感染症で亡くなった方の遺体を取り扱うガイドラインの改正に着手するというニュースであった。
混乱期の20年7月にガイドラインは作成され、「遺体からの感染はない」等により一定の役割を演じたが、不安が漂う中、それに配慮が過ぎたために3年経過しても過剰不安、過剰防御は脱却できていない。人の死を扱うとはどういうことか、その基本にある問題が露呈されたように思う。
ガイドライン改正はいいニュースである。
前原稿が20年の1年間におきたことについて書いたが、本原稿はその後の2年間について分析し、11月22日時点で総括したものである。
 
コロナ禍は第5波と第6波の間で大きく変わった。そして今新たなステージに入ろうとしている。
オミクロン株に変わっただけではなく、世相も雰囲気も大きく変わった。
このことは記録を分析する中から明確にうかがえた。
 
今回の原稿は当初の25ページ予定を5ページもオーバーし30ページとなる大部となり編集委員会に迷惑をかけた。400字原稿で約90枚にもなる。
全体の多くは記録であるが、葬儀業界の問題だけではなく、宗教界の対応の問題、死生観の変化…と書く形となった。
滝野記者に今回そのさわりを紹介いただいた。
 

「コロナ禍と葬儀に与えた影響(続)」の目次

 
「コロナ禍と葬儀に与えた影響(続)」の目次は以下のとおり。
 

はじめに―本稿の位置づけ
一 コロナ禍―2022年11月の現在

二 Covid-19流行の3年間の推移と葬儀等への影響

  • 新型コロナの感染の波による変化
  • コロナ禍がもたらした社会的負
  • 緊急事態宣言、まん延防止等重点措置(21年)
  • コロナ禍の転機―第5波と第6波の間
  • オミクロン株大流行下の不思議な現象(22年)

三 コロナ禍が葬儀に与えた影響

  • 葬祭事業者の課題
  • 宗教者の課題
  • 死生観や葬送観に与えた影響

結び

はじめにー本稿の位置づけ

ここでは「はじめに」の部分を紹介する。

はじめにー本稿の位置づけ

本稿は「コロナ禍と葬儀に与えた影響」(2021.2『葬送文化22』)に続くものである。前稿は主として2020年11月に執筆したもので、コロナ禍の最初期の動向、社会的動揺およびその影響をまともに受けた葬儀の簡素化とその問題点を指摘した(21年1月22日、日本葬送文化学会定例会講演はYouTube日本葬送文化学会チャンネル参照)。

前稿の結びで「Covid-19との人類の闘いは、ワクチン開発についての安全性を含めての確実な見通しがない現在、さらに1年は続くだろう」と記載した。

その後、ワクチン接種は全世界で進んだが、コロナ禍は前稿の予測を超え、さらに継続かつ長期化した。20年1月、中国湖北省武漢での発生報告以来22年12月末で満3年となる。世界全体では感染流行は下火に向かいつつあるものの、未だ「収束」には至っていない。

新型コロナウイルス感染症(以下、Covid-19)の感染拡大により、多大な重症者、死亡者を生み、医療危機を招いた。それだけではなく、デマや中傷が広がり、また営業自粛(海外ではロックダウン、外出禁止、営業停止も)等による社会経済活動の制限から特に社会的格差、社会的弱者の問題をあぶりだす等の広汎かつ深刻な「コロナ禍」(Covid-19流行による災害、社会的ダメージ)を招いた。

改めてこの3年間を見直すと、Covid-19の流行には大きな変化があり、その推移によりコロナ禍も変化し、葬儀に与える影響も質的変化が見られる。
前稿執筆時には不確実であった知見も少しずつ明らかになってきている。
当初感染は「飛沫感染と接触感染による」と言われた。現在では接触感染のリスクは低く、飛沫感染に加え、空気流通の悪い閉鎖空間でのエアロゾル感染〈空気感染〉のリスクが最も高いことが判明している(WHO)。

本稿は最新の知見を反映したが、それでも未だ「渦中の分析」に留まる。

【葬儀等への影響】混乱した葬送、火葬
コロナ禍は、葬送においても、世界各地で葬儀の少人数化以外に、感染死者の急激な増大で火葬や埋葬が間に合わずに遺体が集積し、柩が積み上げられた例が見られた。日本でも対面してのお別れが困難になり、火葬場での葬送、骨上げ(拾骨)を家族ができなかった例まであった。多くの地域では改善されたが未だ改善されていない地域もある。死者を葬送するとはどういうことか、という本質的な問いを投げかけている。

・データ 世界と日本の感染者数、死亡数
22年11月22日現在、世界の感染者数(複数回感染もあるので累計)は約6億4千万人(世界人口80億人、約8%)、死亡数も660万人を超えた。
日本は、20年段階では欧米比で少数に留まっていたが今では感染者数累計で2千万人を超え(日本の総人口1億2550万人、約19%)、死亡数は5万人近くまでになっている。

(注)
実数では、【世界】感染者数6億3834万2639人、死亡数662万1707人。
感染者数順位は、①アメリカ、②インド、③フランス、④ドイツ、⑤ブラジル、⑥韓国、⑦イギリス、⑧イタリア、⑨日本、⑩ロシア。
死亡数順位は、①アメリカ、②ブラジル、③インド、④ロシア、⑤メキシコ、⑥イギリス、⑦イタリア、⑧インドネシア、⑨ドイツ、⑩フランス(ジョンズ・ホプキンス大学COVID-19 Dashboardによる)。
【日本国内】感染者数2381万4209人、死亡数4万8338人(厚労省「感染者動向」による)。

家族葬の多義化

「家族葬の多義化」について触れた個所は以下である。

葬式では、社葬やお別れの会は緊急事態宣言下では延期または中止となり、まん延防止等重点措置下では規模縮小または延期となることが多かった。
また一般の葬式では「家族葬で行う」ことが定式化した。
この場合の「家族葬」は「大がかりには行いません」という宣明の意味が強い。
家族葬だから遺族、親族、特別な関係者に限るという意味はあまりなかった。
「コロナ禍の時節柄、配慮して行います」という意味である。
数人という極少の家族葬もあれば100人を超える家族葬もあった。
また、一般会葬は受けるが「式場内の葬式儀礼は特別な関係者のみで」という意味の家族葬もあった。
都会では死亡通知を一般には出さない、出す場合も1カ月程度以降後でという事例も増加した。
葬式の私事化もあるが「コロナ禍で他の方を煩わせたくない」という心理も働いたろう。

「家族葬」の多義化と一般化

20年段階では、葬式自体規制対象とはならなかったが、集会自粛のあおりを受けて、小型化の波に覆われた。
そこで大都市では直葬も増加したが「家族葬」という言葉が標準となった。
だが第6波では適正な距離を取れば大丈夫ということで、コロナ禍以前に比べると人数的には減少しているものの、式場内部においても知友人関係者その他の参列が見られるようになった。

コロナ禍の変わり目

私が「コロナ禍の変わり目」として着目したのは、「第5波と第6波の間」である。

感染の波の変化と社会的変化とは大きく連動した。

同じ不安が覆っていても、20・21年の第3波から21年の第5波までは、次第に緩みが進んだものの、社会に緊張度が高くギスギスしていた。しかし、22年の第6波以降は目に見えて緩みが生じるようになった。それは長いコロナ禍での社会経済活動停滞危惧かつ各人の個人心理的疲れ等があったためだろう。

【葬儀等への影響】進む葬式の平常化
葬式もまた感染防御を必須としながらも「平常化」を進めた(特に地方で)。
大都市での小型化や簡略化があまり変化しなかったのは、コロナ禍でコロナ禍以前から進行していた葬式の「個人化」現象がいっそう進んだことによるものであり、コロナ禍は名目となったが影響は軽微だったように思われる。

第6波以降も感染爆発で政府、地方自治体では手を打つのだが、その効果が次第に乏しくなっていった。

21年9月末に第5波のすべての措置が解除された。

21年10月以降22年1月までの期間は、第5波と第6波の間の感染流行の小休止期間となった。これが大きな社会的空気の変化を招くことになった。

それまでのギスギスしたコロナ禍の緊張感が一挙に緩むことになる。

これの流れがわかるのは厚労省の「重症者数の推移」のグラフである。

詳しくは23年1月刊行予定の日本葬送文化学会の会誌をご覧いただきたい。
(プロフィールに掲載しているメールアドレスにお申込みいただければデータはお送りできる)

 

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

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