新型コロナウイルス感染症と葬儀4

■グローバル展開の流行
新型コロナ感染症の流行は全世界的(グローバル)展開を見せている。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6356005
これによると
「ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が2日、世界全体で100万人を超えた。3月26日に50万人を上回ってから1週間で倍増した。死者も5万人を超えるなどウイルスは猛威を振るい続け、早期終息の見通しが全く立っておらず長期戦の様相を呈している。」
となっている。

■スペインにおける葬儀
葬儀の件では
①AFPによれば、スペインで3月30日から4月11日まで葬式禁止となった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040100036&g=int
「埋葬や火葬に立ち会う人数は3人までに制限し、必ず1~2メートルの距離を取って参列するよう求めた。」
とあり、これは新型コロナウイルス感染症による死者の葬儀のことだけではなく、すべての葬儀を対象としたものである。
つまりは葬儀で人が集まり、それで感染が拡大することを案じたものであった。

新型コロナウイルス感染症による遺体の扱いはさらに深刻である。
CNNによれば、マドリード市内のアイススケート場が仮の遺体安置所とされ、新型コロナウイルス感染症による遺体はここに集められる。
https://www.cnn.co.jp/world/35151318.html
一時的な処置とされているが、遺体搬送は軍が担当。
葬祭業者は「作業員の感染を防ぐための防具が確保できない」として遺体回収を中止。
遺体の火葬、埋葬(土葬)は「納棺状態」にある場合に限定して行われている。

■イギリスにおける葬儀
イギリスでは少し異なる模様。
AFPが伝える3月23日のジョンソン首相の演説では
https://www.bbc.com/japanese/52014769
「・衣料品店や電気店など「必需品ではないもの」を販売する商店は直ちに閉店となる。
・図書館、遊び場、屋外運動場、礼拝場も閉鎖される。
・3人以上の集まりは禁止される(同居人たちの場合を除く)。
・結婚式や洗礼式は禁止されるが葬儀は認められる。
・公園は開放されたままだが、人々が運動のため外出できるのは1日1回だけになる。」
となっていて、結婚式、洗礼式(キリスト者とされる儀式)は禁止されるが「葬儀は認められる」となっている。

■南米 エクアドル 医療崩壊、葬儀崩壊
朝日新聞4月3日によると南米エクアドルの状況が報じられている。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14427790.html?ref=pcviewer

これによると
「死者の火葬や埋葬が追いつかない状態となっている。なかには、遺体が路上に放置されるケースもあり、警察や軍が回収を進め始めている。」

葬祭関係者によると
「以前はグアヤキル市内の最大墓地に1日平均30~40体を運び、火葬していた。だが最近は160体ほどを運び、それでも遺体の回収が追いつかない。火葬する設備も足りず、土葬する場合も少なくないという。バロナ氏は『運んでいる遺体には感染確認中だったものが少なくなく、遺族は新型肺炎の症状があったと言っている』と語る。」
かなり深刻な状態。
大統領は「すべての死者に尊厳ある埋葬をする」と表明。警察や軍が回収作業中とのこと。

死者が新型コロナウイルス感染症に罹患しているか不明な遺体、罹患した遺体が恐怖のため放置され、警察や軍が回収にあたっている。

■日本における新型コロナウイルス感染症で死亡した遺体の取扱い

既に3月26日にこれについては解説した。
新型コロナウイルス感染症流行に伴う葬儀の状況
https://hajime-himonya.com/?p=3645

ここで取り上げたように厚労省で指針を明らかにしている。
新型コロナウイルス感染症は指定感染症に指定され二類相当とされているので感染症法により「24時間以内に火葬可能」となっている。
エボラ出血熱等の一類感染症は、厚生省令で「24時間以内に火葬しなければならない」となっているが、これとは異なる。
現実には24時間以内の火葬を必須のこととして対応している事例もあるが、「遺族の意向等の尊重」が条件となっていることに注意すべきであろう。

「遺体の搬送や火葬場における火葬に際しては、遺体からの感染を防ぐため、遺体について全体を覆う非透過性納体袋に収容・密封することが望ましいです。遺体を非透過性納体袋に収容・密封後に、納体袋の表面を消毒してください。遺族等の意向にも配意しつつ、極力そのままの状態で火葬するよう努めてください。
また、遺体の搬送に際し、遺体が非透過性納体袋に収容、密封されている限りにおいては、特別の感染防止策は不要であり、遺体の搬送を遺族等が行うことも差し支えありません。」

基本は病院側が「遺体を非透過性納体袋に収容・密封後に、納体袋の表面を消毒して」葬祭事業者に引き渡すこととなっているのだが、病院関係者には「葬祭事業者が行うもの」と葬祭事業者になすりつける事例も見られ、遺体の引き取りを拒否する葬祭事業者もあった。
いずれにしても非透過性納体袋に収容・密封されれば、死者には飛沫感染はないのだから、残る接触感染の心配を封じ、感染危険は減少する。
実際にも葬祭従事者で、遺体からの感染を危惧する声は大きくない。

これまで遺体に対しては「感染症の危険がある前提」でのスタンダード・プリコーション(標準予防策)が葬祭従事者に求められていた。(『葬儀概論』でも詳細に説明)
しかし、ご遺体は素手で取り扱われ、感染症に配慮されない例が多かった。
この際、使い捨て手袋の使用を必須としたい。

■「告知されない」等の不安
感染症であることを病院がわかっている場合の遺体であっても、個人情報を理由に病院側が葬祭事業者に開示しない例が多かった。
感染症患者の「人権を守る」というのは感染症法の主旨の一つであるが、「感染症への適切な対応」もまた重要な課題である。医療機関を出た後の遺体からの感染を防ぐことは医療機関の責務である。
これまで医療機関を離れた後のリスクについて自覚を欠いた医療関係者の意識は何としても変えないといけない。

今回、新型コロナウイルス感染症による死者について一部医療機関で告知されなかった事例があり、厚労省は医療機関に告知を義務づけた。
当然にも葬祭事業者には「人権への配慮」は必須である。

■葬祭事業者の不安
検査がすべての人に対して行われているわけではない、むしろ一部にすぎないことから、葬祭事業者の中には「この死者は新型コロナウイルス感染症に罹っていない」という保証がない、という不安がある。
この不安は当然ではあるが、日常において遺体の取扱いにおいてスタンダード・プリコーションを実施していれば大丈夫である。これができていないところにこそ問題がある。

■「葬式への不安」
今、「葬式への不安」の最大のものは「葬式で集まること」への不安である。

大野埼玉県知事が3月29日の記者会見で次のように言った。

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、埼玉県の大野元裕知事は29日に記者会見し、数人以上での会食や夜間の外出、歓楽街へ出かけることも避けるよう求めた。冠婚葬祭についても触れ、『県外で葬儀で感染が広がった例が報告されている』として、出席人数を減らすなど感染防止の工夫をするよう求めた。」
ここでの「県外での葬儀で感染が広がった例」というのは根拠のないものであった。
しかし、残念なことに3月30日に愛媛県で葬儀での感染事例が現れた。
https://hajime-himonya.com/?p=3766

家族分散の時代である。
松山市の事例では、栃木県で感染した人であった。
葬儀に集まった人は21人というから極めて小さな葬儀であったが、県内参加者は13名、県外参加者は8名。
しかも誰が新型コロナウイルス感染症に罹患しているかは不明。無症状が多いので体温だけでは認定できない。
もはや誰もが「自分が罹患しているという自覚で対処」しなければ感染拡大は防げない状況にある。

このため実際の葬儀においては、会葬者を招かない密葬、葬儀式をしない直葬のほか、さまざまな工夫が行われているようである。
①一般会葬者は受付・会葬のみで、葬儀は限られた関係者だけで行う。
②会食での感染拡大が言われているので、葬儀での会食は極力しない。
③葬儀会場・会館の消毒
⑤葬儀出席者への会場入り口でのアルコール消毒の義務付け、マスク着用。
⑥会場で離れた配置(密集を避ける)
⑦会場での換気の確保

■葬儀の重要性
「葬儀」というのを「葬儀式」という儀礼に限定すべきではない。
死亡直後から発生するプロセス全体である。
そこで要求される最大のものは「死者の尊厳」と「遺族等の心情への配慮」である。
これを軽視することは赦されない。

どんな状態にあっても、可能な限り「死者の尊厳」は確保されなければならない。
どんな状態にあっても、可能な限り「遺族等の心情への配慮」は必要である。
この原則は曲げてはならない。

テレビでの映像であるが、イタリアの教会で神父が一人、柩を前に葬儀をしていた光景が映し出されていた。
会葬者を集めることはできなかったが、そこでは確かに葬儀が行われていた。

葬儀式のもつ意味では、遺族等(「等」とするのは血縁者に限定されないからである)においては、①グリーフワークの第一歩である「死が事実である」ことの確認と、②共感であると思う。

■東日本大震災被災者の葬儀
2011(平成23)年の東日本大震災における被災者の葬儀を思い起こす。
発見された遺体の身元が判明し、検案が済んだ遺体は家族に引き渡され、遺族等は他のまだ未発見の家族へ配慮し、遺体搬送車に続いて、多くの場合は自家用車1台で遠隔地の火葬場に向かった。
火葬に立ち会えなかった場合もある。
未だに遺体が発見されない事例も多く、7千人を超えた。
夏以降に改めて葬儀が行われたが、行方不明者の場合には遺体も遺骨もない状態で、極めて複雑な感情の下で行われた。

これと比較することはできないが、今の葬儀状況も極めて非常時の複雑さをもっている。

志村けんさんの場合、家族は危篤でも死亡宣告後も火葬時の見送り、骨上げもできずに遺骨となってから家族に引き渡されたという報道がされた。
3月31日NHKが報じたところによると、
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200331/k10012360721000.html
兄の知之さんの言葉として
「知之さんは病院で、志村さんのひつぎを見ることができたものの、感染を防ぐため顔を見ることはできず、火葬にも立ち会うことはできなかった」という。
これは東京の民間火葬場に限った対応であるが(おそらく新型コロナウイルス感染症の場合、家族が濃厚接触していて、発症していなくても罹患している可能性があることを危惧し、例外対応が困難なので一律拒絶しているのだろう)、こうした状況もあるようだ。

たとえ現段階での葬儀が限定的であったにせよ「死者の尊厳の確保」「遺族等の心情への配慮」は最大限大切にして営まれるべきである。

■非常時の葬儀、後日の葬儀
葬儀のネット斡旋事業者であるよりそう(東京都品川区)が「後葬サポート」を発表している。
https://www.yoriso.com/sogi/newsrelease/all/news200310-1/
それによれば、

「よりそうのお葬式」は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴う
政府からの大型イベントや集会の自粛勧告を受け、
近親者のみで故人をお見送り後、感染症の終息を待って多くの参列者を呼んだ葬儀を改めて実施するご家族を支援するため、
「よりそうの後葬(あとそう)サポート」を2020年3月10日(火)から3月31日(火)まで提供します。

東日本大震災の被災者の葬儀を思い起こす。
これ自体は問題ではない。
志村さんの場合も落ち着いた段階でのお別れ会のようなものを考えているらしい。

問題は、利用例で後葬をいかにも無宗教葬として行うことを推奨しているかの表現が見られることである。

「よりそうの後葬サポート」を利用して一定期間を置いて『一日葬』無宗教プランで後葬を実施した場合、プラン費用の278,000円(税抜)から50,000円(税抜)を差し引いた228,000円(税抜)をお支払いいただきます。

これは見識がない。
そもそも憲法14条には

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

とあり、19条、20条には

第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

とある。

信教・信条の自由は人権に属するものである。

事業者は各個人の信教・信条を尊重する責任があり、無宗教葬に肩入れすることは見識がない、と言わざるを得ない。
「仏教葬を守れ」というのではない。
個々の信教・信条の尊重こそ重要である。
それが個々に寄り添うことなのである。

 

 

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投稿者: Hajime Himonya

碑文谷 創(ひもんや・はじめ)/ 葬送ジャーナリスト、評論(死、葬送)、 元雑誌『SOGI』編集長(1990~2016)/ 【連絡先】hajimeh46@nifty.com/ 著書 『葬儀概論(四訂)』(葬祭ディレクター技能審査協会) 『死に方を忘れた日本人』(大東出版社) 『「お葬式」はなぜするの?』(講談社+α文庫) 『Q&Aでわかる 葬儀・お墓で困らない本』(大法輪閣)  『新・お葬式の作法』(平凡社新書) ほか/

「新型コロナウイルス感染症と葬儀4」への1件のフィードバック

  1. 碑文谷様、お疲れ様です。
    ここのところ、ハイペースで執筆され少し心配しながら拝見しております。
    怖いものには蓋を…ではないですが、志村さんの件では少し驚きました。
    遺族などの心情に配慮を…との通達があったにも関わらずですから。
    右へ習わないよう気を付けたいものです。
    明日は我が身。
    記事を身に纏い精進いたします。
    ご自愛くださいますように。
                 umezho拝

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