死後、人間の身体はどう変容するのか?―死体現象

遺体について論じる時、死体現象について知らねばならない。 病院における「死後のケア」「死後の処置」について看護職にある者は「遺体のその後」について充分な知識をもって死後の処置にあたっているとはいえない。 それゆえ「死後の処置」をもって遺体は安全になるわけではない。 遺体の変容は主として病院から出て、葬祭業者に引き渡されてから本格的に進行するのだが、一部を除いて遺体の管理に自覚的である葬祭担当者は少ない。 私は死体現象について専門家ではない。 そこで、本稿を核にあたり、以下の書籍等を参照したことを予めお断り... 続きを読む

死学ー遺体の位置づけと取り扱う者の倫理(2)

死学thanatology,death study ―遺体の位置づけと取り扱う者の倫理 https://hajime-himonya.com/?p=1539   の第2回 死学thanatology,death study ―遺体の位置づけと取り扱う者の倫理(2)   1.死学とは何か?(続き)   1)日本における現状   国際葬儀連盟(FIAT-IFTA)では「葬祭業者」をサナトロジストthanatologistと呼称している。 「サナトロジーthanatology」は「死に関する学問... 続きを読む

死学 ―遺体の位置づけと取り扱う者の倫理(1)―遺体に対する考察

遺体に関する考察   「遺体」についてはこれまで何回か書いている。 しかし、ブログではまとまった形では掲載していない。そこでこの地味だが逃れられないテーマについて、さまざまな形で書いたものを再編して掲載する。 SNSという特性の同時性とはかけ離れたものであるが、ご理解いただきたい。 しばらく続くが、関心のある方は目をとおしていただけると幸いである。   葬儀を論ずる場合に「遺体」は外せない。 しかし、過去に仏教会との関係で葬儀について書き、その中で遺体について書いたら、「残酷過ぎる」ということで、その箇所... 続きを読む

遠くなる母とその死―個から見た死と葬送(25)

携帯電話が鳴った。22時15分。 「高倉和夫さんですね。林病院の看護師の及川と申します。お母様の芳子さんが危篤になられましたのでご連絡します」 すぐに病院に車を走らせた。 ひどく落ち着いている自分がいた。 母は4人部屋から個室に動かされていた。 「高倉さんですね。こちらへどうぞ」 病室では若い医師がモニターを見ていた。というより私が来るのを待っていたかのようだ。モニターの線はもうなだらかであった。 「22時55分、ご臨終です」 と医師は言い、立って私に頭を下げた。 母の手を握ってみたが、ダラーンとしてい... 続きを読む

「葬式をするって!」―個から見た死と葬送(24)

「葬式をするって!」 兄が怒鳴った。 「どれだけ苦労したって言うんだ。これでやっとせいせいしたっていうのに」 兄が疲れた顔で言った。 兄の言うこともわからないではない。この10年、母は昔の穏やかな母ではなかった。 「お前たちは私を殺そうとしている」と被害妄想にかかり、近づくだけで「怖いよ」と喚き、退く。 また、よく怒鳴った。 私たち兄妹はすっかり消耗してしまった。 「でも、この10年の母さんは病気だったのよ、ほんとうの母さんではなかったのよ。せめてお葬式くらいやってやろうよ」 と私は必死に兄に頼んだ。 渋... 続きを読む