死んだ戦友に義理立てした父―個のレベルから見た葬送(10)

個のレベルから見た死と葬送(10) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 死んだ戦友に義理立てした父 「親爺、もういいじゃないですか」 従兄が叔父を大声で制した。 叔父が「父の葬式をなぜしないのか」、「寺に断らずにいいのか」、と私に向かってなじっていたからだ。 叔父の気持ちも充分に理解していた。 「私たちもできるならば葬式をしたかった。だが、これは父自身の家族への言いつけだった」と叔父には繰り返し説明した。 「寺の墓は... 続きを読む

弔われなかった死者たちの「葬」―個のレベルから見た死と葬送(9)

個のレベルから見た死と葬送(9) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 弔われなかった死者たちの「葬」 「葬」とは、歴史的に見れば多様である。 大昔であれば、死ねば山や野に、いや川原や路端に捨てられたこともある。聖たちがその死体を集めて火をつけ燃やし、その跡地である塚に名をつけて歩いたとされる記録もある。中世から近世にかけ、戦場や災害で死んだ者の死体は、集められ、大きな穴が掘られ、そこに投じられ埋められ、その跡は「塚」... 続きを読む

悔い―個のレベルから見た死と葬送(8)

個のレベルから見た死と葬送(8) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 悔い 出棺時に、彼はボロボロ泣いていた。 肩を大きく震わせながら。 「ごめんな、ごめんな、ごめんな…」 彼は棺の中の妻に囁きながら謝り続けた。 彼の妻が倒れた時、彼は不在だった。 その日彼は、予定されていた会合とその二次会にも行くと言って出かけた。 その朝、普通に、彼の妻も毎朝やっているように、外に出て彼を見送った。 彼女が倒れたのは、推定だが、夜... 続きを読む

彼の死後、同級生―個のレベルから見た死と葬送(7)

個のレベルから見た死と葬送(7) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 ⑫彼の死後 その男の写真とプロフィールは彼の創設した会社のホームページに今も残っている。 彼が創設したとはいえ、それは彼のフリー編集者としての事務所で、晩年(といっても40代)には、ほとんどボランティアとして医療活動の事務局を担った。その傍ら、その関連の人たちの手記を、自費出版に等しいものを、事務所の社名で細々と世に出した。類を見ないほど生真面... 続きを読む

祖父の記憶、「娘」の死―個のレベルから見た死と葬送(6)

謹賀新年*:ღ ╠ ╣ a Ρpy ღ:*♪(๑ノ ᴗ ◔ิ๑) *¨*•. 今年は年賀状を書いていません。皆さんにとっていい年でありますように。私はボチボチやっていきます。 2017年元旦  碑文谷 創 個のレベルから見た死と葬送(6) 基本としてここに描いたものはフィクションである。私の周辺で生じたものが多く含まれているが、当事者の心象に投影して描いている。 ⑩祖父の記憶 私には「祖父の記憶」というものがほとんどない。物心つく前に死亡しているからだ。 父方の祖父の晩年は、末子で、むずがる赤ん坊の私を... 続きを読む